行雲流水
2015年4月21日(火)8:55
「恵子美術館」(行雲流水)
「恵子美術館」は1998年、市民や内外の画家仲間から期待されて開館、大きな文化的役割を果たして、このたび閉館した。この「恵子美術館」は全国でも珍しい超現実主義(シュールレアリズム)・幻想美術を中心とした美術館で、垣花恵子さんの各賞受賞作品や、内外の美術家からの寄贈作品を順次展示してきた
▼彼女の絵は「怖い不思議な絵だ」と言われることが多いが、小さい生命が、子宮、もしくは宇宙の調和に優しく包まれていることを感じさせる一連の作品もある。両者は深層ではひとつなのではないか。岡本太郎は『沖縄文化論』で、「きれいなものは美しくない」と書いたが、怖い彼女の絵には深い美が表現されているに違いない
▼ところで、美術館2階には「ケイゾウの部屋」と称する部屋があって、恵子の父親・恵蔵さんの描いた貼り絵が多数展示されている。痛み止めが次第に効かなくなる末期に退院、痛みも忘れたかのように、同じ姿勢で何時間も制作に没頭したという。そのこともすごいことだが、描かれた絵の明るさに驚く。小鳥や子猫、草花など、生きとし生けるものをいとおしむかのようである
▼部屋には恵子の描いた父親の肖像画が掲げられ、母親・ヒロさんのふすま絵の緑が、数々の貼り絵の生気と呼応している。美術館の運営に献身的に当たった夫の山田八郎さんと合わせて、家族が心をひとつにして「恵子美術館」を支えてきたことが、よくわかる
▼歌の一節が思い浮かぶ。「別離(わかれ)は人の常なるを、銀漢さえて水清し」