行雲流水
2015年4月28日(火)8:55
「斎藤隆夫の演説」(行雲流水)
「歴史とは、現在と過去との対話である」と言われる。あるいは、過去の真実を現在に生かすこと、と言い換えてもいいだろう
▼NHKの番組に「英雄たちの選択」があり、先週は斎藤隆夫が取り上げられた。斎藤は二・二六事件以降すすむ軍部の政治への介入を危惧し、日中戦争を拡大していく軍の暴走を批判して、議会で質問や「粛軍演説」を行い、戦争の早期終結を訴えている
▼「この大義名分の無い戦争は何のための戦争か」と質問、政府を追及している。また、(映像と音声の記録はインターネットで確かめることができるが)、次のように演説している。国民生活が逼迫しているなかで、国民生活を犠牲に、いたずらに聖戦の美名に隠れて、「国際正義」や「共存共栄」など、雲をつかむような文字を並べたてて、戦争終結の機会を逃している
▼やじと怒号の飛び交う中で、彼は言う。「国家百年の大計を誤るようなことになれば、政治家は、死してもその罪を滅ぼすことはできない」。この演説で彼は議会を追われることになるが、議会で除名に反対したのは、7名だけであった。しかし、次の選挙で彼は選挙区で最高票を獲得、議員に返り咲き、戦後は吉田内閣の国務大臣を務めている
▼彼のような気骨のある政治家がめったにいなくなったことが、現在、この国の悲劇である。また、「ねずみの殿様」と呼ばれて、庶民の生活を大事にする彼のような政治家は少なくなり、政治家の自己保身が目立つ
▼今、歴史から学び、現在に生かすことが肝要である。