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社会・全般
2015年6月14日(日)9:00

子宮頸がんワクチン副反応㊦

求められる「理解」/現状打開へ「支える会」発足

 子宮頸がんワクチン接種に伴う副反応に苦しむ娘を持つ親たちが立ち上がり、宮古でも支える会が発足した。メンバーは情報を共有しながら、組織としての活動を展開し、現状を打開する突破口を模索している。宮古島市は医療費と渡航費の助成を決定した。支える会ではこれを成果と捉えた。しかし、取材を進めるとその助成条件は、特に渡航費の面で実情との間に大きな隔たりがあることがわかった。

■ 隔たり

 市の渡航費は、沖縄本島への離島割引航空運賃とし、往復分を助成。沖縄本島から他地域へ治療のための渡航は、5回を限度に往復航空運賃の2分の1を上限として助成するものだ。
 宿泊費については、渡航1回につき1泊分を助成。県内は1泊8000円、県外は1泊11000円が上限となっている。
 しかし、Aさんの場合で見ると沖縄本島や東京に上京した際には、連泊、長期滞在も頻繁にあり、渡航1回につき1泊分の宿泊費は状況に即してはいない。さらに、沖縄本島から東京などへの運賃助成についても同様だ。
 支える会では「市が助成を決定してくれたことはとても感謝しているが、条件面についてもっと検討してほしい」との声も上がっている。

■ 支援

 支える会ではすでに、宮古島市、市議会、県議会に支援要請を行っており、15日には県への要請を予定している。
 自治体の支援については、横浜市が昨年6月から「医療費」および「医療手当」の給付を実施。神奈川県でも今年、医療費の自己負担分などを給付する方針を決めた。
 全国に先駆けて助成を決定した横浜市では、医療費の自己負担分以外にも、「医療手当」(医療を受けた月に限り月額で給付)を支給している。
 その理由について同市では「状態が思わしくなく、移動の際にタクシーなどの利用も多く、不便を来している状況もあることから支給している」と説明した。
 その支給額は、通院の3日未満が3万3200円、3日以上が3万5200円。入院は8日未満が3万3200円、8日以上が3万5200円。同一月に通院・入院が3万5200円。
 同市では、昨年6月から今年4月末までに人に対し、約1400万円を支給した。 

■ 夢

 Aさんの長女は、ワクチン接種後の副反応の症状で光に敏感になり、日常生活ではサングラスが必需品になった。その奥の瞳が輝いたのは将来の夢の話をした時だった。
 親せきに障害を持った子供がいて、幼いころからその子と接するのが楽しかったと話す長女は、中学2年の職場体験学習の際に、宮古特別支援学校で障害のある子供たちと交流。その時に「養護教諭になりたい」と、将来の夢が明確になった。
 副反応で体調が悪い中、高校2年のインターンシップ先も宮古特別支援学校を選んだ。すべての日程はこなせなかったが「先生も生徒たちもみんな元気でとても優しくて、そして毎日一生懸命生きている感じがした」と話した。

■ 理解

 このワクチンの接種については、副反応の問題を取り上げて「接種すべきではない」との主張がある一方で「がんの予防のためにも必要」との声もあり、賛否両論ある。
 しかし、その副反応と思われる症状で苦しむ子供たちが実際にいる。その家族は、原因も治療法も分からないという先の見えないトンネルの中で一緒に苦しんでいる。
 宮古島でも、今回紹介したAさんの家族だけでなく、ほかにも複数の家族が苦しい日々を過ごしている。
 周囲がこの現実を知らないということが原因で、いつしか当事者やその家族を傷つけ、追い込んでしまっている状況もある。
 副反応で苦しむ少女たちが将来に夢や希望を持って生きていくために、そしてその家族の苦悩を和らげるためにはどうすべきか。行政、議会、学校、地域、そして多くの市民がその現実を知り、理解することから始めるべきではないだろうか。それが、求められる支援につながるのかもしれない。


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