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行雲流水
2015年6月25日(木)8:55

「日曜討論」(行雲流水)

 NHKテレビ「日曜討論」での政党座談会。政治家たちが白を黒と言い、黒を白と言いくるめる弁舌が見ものだ。我田引水の論戦のようにも思えるが、視聴者に考える時間を与えてはくれない。テレビコマーシャル並みの瞬間的印象しか残らない

▼他方、庶民の居酒屋談義は口角泡を飛ばしているうちに理屈が混乱する。お互いの主張が逆転していたりするからおもしろい。典型的な例に「民意の尊重」がある

▼たとえば学校の統廃合問題で、「校区民の民意」を尊重すれば合併反対だが、市議会が賛成なら「市民の民意」は合併賛成となる。民意の形態は「あざなえる縄の如し」だ。また、民主主義の運営ルール「多数意見に従え」と「少数意見にも耳を傾けよ」は、裏腹の関係にあるから混乱する

▼民主主義の土台には、多様性の尊重と寛容の精神があるはずだ。合意形成には情報公開と説得を伴うから、手間ひまがかかる。しかし現実には、賛否の結論を急ぐあまり、意思と感情のもつれ合いになる

▼大阪市の住民投票騒動では、橋下市長の「意思」と大衆の「感情」がぶつかった。勝敗を左右したのは高齢者票。「高齢者無料パス廃止」への反発が強かったという

▼歴史をふりかえれば、偏った情報や過度の感情移入によって形成された世論は危うい、という例は多い。ポーツマス条約締結の際の日本国民の反発やナチスの台頭などだ。政治の世界では、「ためにする」議論が多い。高尚な言葉も重箱の隅をつつくような話も、よくよく吟味しながら聞く必要がありそうだ。

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