観光産業との融合を/宮古の水中遺跡
片桐さん、活用法で強調/博物館講座
「海に残された先人の歴史~宮古の水中文化遺産」と題した2010年度の第2回宮古島市総合博物館講座が16日開かれ、県立埋蔵文化財センターの片桐千亜紀さんが、07年度に実施した「沿岸地域遺跡分布調査」の成果や意義、活用法を話した。片桐さんは宮古での活用について「すでにある海人体験やガラスボート、ダイビングなどの観光産業と遺産を融合すれば、新しい文化活動の創出は可能」と強調した。
水中文化遺産は、水中に存在する世界共有の遺産。近年「水中考古学」に位置付けられ、注目を集めているという。
宮古の調査では、12世紀以降とみられる座礁船の遺物散布地や魚垣、古港、石切場、塩田など、34カ所の遺跡が確認された。
報告された座礁船の遺物散布地は、英国軍艦「プロヴィデンス号」座礁地の八重干瀬や来間島沖、吉野海岸沖、オランダ商船「ファン・ボッセ号」が座礁した多良間島高田海岸沖など4カ所。座礁地では、中国産の陶磁器や船の部品などが多く見つかった。
来間島沖では16世紀前半と考えられる中国産陶磁器が数多く確認された。片桐さんは「琉球王国の華やかしころ中国、琉球間は多くの貿易船が往来していた。この遺跡からは、当時の航海にさまざまな困難があったことが想像できる」と述べた。
プロヴィデンス号の遺物とみられる船体の部品(十字状の銅製品)にある「↑」状のマークが、過去に池間島の漁師らが同干瀬から引き揚げた鉄製品に刻まれている「↑」と一致したことには「驚きを覚えた」と感動の様子だった。
片桐さんは、これらの遺跡は①琉球王国時代の豊かな物質物流②幕末・明治期の異国との交わり③海岸を利用した生業を物語る遺跡と評価。今後に向けては、保護を検討する必要性を訴えた。