初の医療回診車を導入/宮古病院
患者の在宅診療に貢献へ/災害時など幅広く対応
今年4月に新設された県立宮古病院の「家庭医療センター」に、トイファクトリーインターナショナル(うるま市)が開発した「医療回診車」の第1号車がこのほど、同院に導入された。30日に行われた会見には県、宮古病院、トイファクトリーの関係者が出席し、同車両が持つ機能や導入までの経緯、宮古島における活用方法などについて説明した。同院の本村英治副院長は「導入された車両を積極的に活用し、これまで以上に地域に根ざした医療の提供に取り組みたい」と述べた。
県では、地理的優位性や地域資源等の特性を活用した高付加価値な製品開発を支援することにより、競争力のあるものづくり産業の振興を目的に「戦略的製品開発支援事業」を県産業振興公社に委託して実施している。
今回導入された医療回診車は2013、14年度に実施した「高規格・多目的車両の製品開発」において、トイファクトリーインターナショナルが開発した。
県商工労働部の宮城行夫産業雇用統括監は「導入された医療回診車が宮古病院家庭医療センターの新しい取り組みの一助となり、トイファクトリーインターナショナル社の新製品として国内外で幅広く活躍することを期待している」と述べた。
巡回診療車(モバイルクリニック)とは、救急医療対応する「救急車」ではなく、予防医療を前提とした車両。
車内を診療室使用にしているため、医療施設のない地域でも酸素投与、吸引、心電図のモニタリングなど医療行為を行う環境を提供できる。
車両は救急車とおなじ車型を使用し、車内高は185センチと広々とした空間設計。多くの収納と広い診療作業エリアがあり、手洗いシンクや冷蔵庫のほか、救急搬送時に対応するためのストレッチャーも装備している。
これまでは、入院中の患者の病態が重く医療処置が多い患者の場合は、在宅への道は人手がかかることや搬送に際して安全性のある搬送車の確保ができないことなどを理由に困難を呈していた。
導入された医療回診車は、ストレッチャーが固定され、坂道や悪道でも動揺がなく、患者の安全が保たれ車内での酸素投与、点滴、喀痰吸引などの医療処置もできることから自宅での最期を求める患者のニーズに対応できるようになった。
会見では、在宅での看取りを希望する離島出身の患者を医師3人が医療回診車に同乗して、橋を渡り自宅まで搬送。その日の深夜に死亡確認を行い家族に感謝されたことなども報告された。
高い機能を有した医療回診車には、宮古地域における幅広い医療ニーズに対応した活動に期待が高まっている。