【私見公論】方言問題を考える②/佐渡山力
個人・関係団体の協調で普及継承を図ろう!
前回は、戦前・戦後の標準語励行について学校での実態を紹介した。しからば、失われ衰退の一途にある方言をどのようにして蘇らせるべきか、真剣に考えることは喫緊の課題である。
ちなみに、本地域における方言に関するイベントとしては、年1回催される小学生による郷土の民話大会、中学生による方言パフォーマンス大会(4回実施)と大人による方言大会(22回)があり、他方、ボランティア(個人・団体)による学校訪問指導が散発的に行われていて方言指導に一役買っているのが実状である。
これらの活動は不特定多数が相手で一方通行の感は否めず、実効性に乏しく充分とは言えない。対話形式(オーラルメソッド)によってなされることが最良だと思う。お互いが使っている方言も、祖父母や親の話すのを聞いて身に付け習得している。従って方言の衰退は、親が子や孫に話し聞かせなかったことに起因していると思う。ですから方言の使える方は、子どもが理解しようがすまいが、どしどし使っていただきたい。ちなみに、幼児(赤ちゃん)は、どのような過程を経て習得しているかを思い起こせば分かるように、親や兄姉の幼児語(アンヨガジョウズ等)を通して対話を交わし、どんどん多くのことばを身に付けている。対話文について触れるならば、個々の語彙(ごい)の連結で構成されているので、語彙を豊富に蓄積することはとても大切なことである。
また、親や祖父母の話す方言だが、全部、または一部を織り混ぜて交わした方がよかろう。ところで近々の中に学校でテキストを用い指導することは大変喜ばしいことであるが、受け入れ体勢は充分か不安を感じないでもない。というのは、一体どの地域の方言を教えたらよいかや現場に教える教師がいるか。現場教師は出身地の違うことで方言もまちまちであること等を考えてみただけでも頭を痛める問題が山積している。
この状況を克服するにはどうすればよいかについて述べてみたい。唯一の助っ人としては、各地域の方言堪能者にご協力を仰ぐことが考えられる。その際、小学校区単位で5名ほどの推薦を頂き市教育委または文化協会が委嘱任命されることを望みます。そのことにより都合100名の推進委員が誕生する。これら推進委員が指導に当たれば一段と効果が生ずるであろう。これら推進委員がネットを構成し情報の交換や対策について切磋琢磨し普及に当たることは大きなメリットとなる。もっとも地域ごとに使っている方言を大前提にすることは言うまでもない。各地域で幾世代にわたり継承され使われてきた方言には歴史が刻まれ、文化の起こりを見出し理解することで尊い文化遺産、文化財となり得ます。琉球大学の狩俣繁久教授はそのことを強調され、できれば地域ごとの方言辞典作りを勧めておられます。
次に、何をどのようにして教えたらよいか述べることにする。小生は子どもの日常生活に関連したことばから入ったらよいのではと思っている。子どもの生活を想定した内容から入ることで、例えば①起床から登下校までのこと(勉強・友人関係・給食等)②遊び・手伝い③休日の過ごし方のほか、健康・数詞・人体部位・動植物名・感動詞・ほめことば・親族語彙の面から習得させたいものである。この段階においては、音韻、文法、表記等については、基礎的な取り扱いに留めてよいのではと思っている。
最後に、各地域の推進委員の委嘱は早急にしてもらいたい。学校側は先述した事項を検討され、最大限に活用する体勢を整えてほしい。両者の連携を密にし指導に万全を期してもらいたい。
これらの活動を取り仕切るのは、行政側か文化協会が適切であると思う。市の文化協会には有能な人材がたくさんおられますし、方言博士も数多く認定していることもあり、層一層のリーダーシップを発揮し関わってほしいと思っている。このような観点から方言の使える方や関係団体(個人・団体)は共同歩調を旨として尽力していきたいものである。