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旧暦:10月21日 赤口 己 
行雲流水
2015年10月1日(木)9:01

【行雲流水】「員数主義」

 日本軍はなぜ敗れたか。敗戦直後、フィリピンの捕虜収容所でほとんどすべての人が異口同音に「員数主義」をあげたという(山本七平「一下級将校の見た帝国陸軍」)

▼員数検査とは、帳簿上の数と現物の数が一致しているかどうかを調べるだけのこと。会社でいう棚卸しのことだ。それがなぜ、イズムとなって帝国陸軍をむしばみ、崩壊させたのか。「数さえ合えばそれでよい」へと進み、その内実は全く問わない形式主義に陥っていったからだという

▼員数を合わすためには何でもやる。外面的につじつまが合ってさえいればよく、合わすための手段は問わない。員数を検査せよとの命令に対し、「員数は合っています」と報告すればすむ。形式的に不備のない報告を出せばすむから、実態としては「ある」ものも「無い」になり、「無い」ものも「ある」になる

▼大本営はネグロス島に「空の要塞(ようさい)」をつくれと命令した。現地では、一雨降れば使い物にならない飛行場をつくって「完了報告」をする。その結果、大本営の帳簿には立派な飛行場は「ある」が、実際には「無い」。大本営は、この帳簿を基礎に作戦計画を立てるが、現実には実行不可能となり、帝国陸軍は崩壊して行ったという

▼「不法投棄ごみ残存問題」の裏にひそむ病は深刻だ。現場の実態や作業方法を真剣に検討しないで作業を委託する-完了報告をうのみにする-つじつま合わせで現実を覆い隠す。業務執行能力が疑われている」

▼リアリティーのない体質は社会全体をむしばんでいくであろう。役所だけの問題ではない。

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