糖価調整制度を維持/TPP交渉大筋合意
キビ交付金を確保/農水省「生産に影響ない」
環太平洋連携協定(TPP)締結交渉の大筋合意に伴い、砂糖などの甘味資源作物は現行の糖価調整制度が維持された。これにより糖価調整金を財源とするサトウキビ生産農家への国の交付金は確保される。農林水産省は「基本的に国内の生産に影響はない」として交渉の成果を強調した。
砂糖で大筋合意した内容は、粗糖・精製糖については、現行の糖価調整制度を維持した上で▽高糖度(糖度98・5度以上、99・3度未満)の精製用原料糖に限り関税を無税とし、調整金を少額削減▽新商品開発用の試験輸入に限定し既存の枠組みを活用した無税・無調整金での輸入(粗糖・精製糖で500㌧)を認める-などとしている。
高糖度は無税という諸外国へのアドバンテージは与えたが、農水省は糖価調整制度を維持できた点を交渉の成果に挙げている。
現行のキビ価格(1㌧当たり)は工場が買い取る代金の約5000円と国が支払う交付金1万6420円で構成されているが、この交付金の財源になっているのが輸入糖から徴収している糖価調整金だ。このため同制度の維持が交渉の焦点とされていた。
当初農水省は、TPP交渉によってこの糖価調整金が「喪失する」と想定。年間500億円もの調整金が失われ、キビ産業が壊滅的なダメージを受けるという予測を立てていた。
それだけに今回の制度の維持を強調し、「守るべきところは守れた。基本的に国内生産に影響はない」とした上で、交付金は「これまで通りのルールに従って算定していく。TPPを理由にして交付金が下がることはない」と説明した。
TPP交渉は甘味資源作物以外の品目でも大筋合意に達しているが、その中で牛肉にかける関税の撤廃は回避された。ただ「セーフガード付きで関税削減」としており、現行の38・5%から段階的に引き下げ、16年目以降の最終税率は9%になる見通し。安価な輸入牛の大幅増が見込まれ、子牛産地の宮古地区も少なからず影響を受けそうだ。
TPPは、5年半に及ぶ交渉を経て大筋合意に達した。日本、米国、オーストラリアなど参加カ国の国内総生産(GDP)の合計額は世界全体の4割近くを占めることになる。