泥塗って厄払い/島尻で伝統のパーントゥ
面を着け、全身につる草をまとい泥を付けた3体の来訪神・パーントゥが人々や家などに泥を塗っていく、平良島尻の伝統行事「パーントゥ」が11、12日の2日間、同地区で行われた。厄払いのため泥を塗ってもらう人もいれば、逃げまどう人や抱きかかえられ泣き叫ぶ子供もいた。
初日の11日は午後5時すぎ、パーントゥ3体が島尻集落はずれの「ウマリガー」(生まれ井戸)から現れ、拝所で祈願をした後、集落で体の泥を塗る厄払いを行った。
集落内を練り歩くパーントゥは近くの人に次々と泥を塗るだけでなく、逃げようとした人を追いかけて捕まえ、上からのし掛かるようにして相手を泥まみれにしたりもした。パーントゥと鉢合わせをして逃げまどう人や、抱きかかえられしまい恐怖の余り大声で泣き叫び助けを求める子供たちもいた。
小さなわが子の無病息災を願い、パーントゥを呼んで子供の顔などに泥を塗ってもらう親の姿も多く見られた。埼玉県から妻と生後9カ月の子供と訪れていた山崎裕司さん(29)は「妻が平良出身で、子供が生まれて初めてのパーントゥになるので今回はこれに合わせて来た。子供は顔に泥を塗ってもらったので、向こう1年間は健康に過ごせると思う」と語った。
集落には地域住民だけでなく、泥を塗ってもらおうとする周辺住民や、その姿をカメラに収めようとする観光客など多くの人が集まった。
パーントゥの由来は、数百年前にクバマと呼ばれる島尻の海岸に漂着した黒と赤の仮面を村人が海のかなたから訪れた来訪神だと崇敬し、その仮面を男がかぶって集落内を駆け回ったことと伝えられている。「奇祭」とも称される行事で、1993年に国の重要無形民俗文化財へ指定された。