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行雲流水
2016年1月19日(火)9:01

【行雲流水】「古きよきもの」

 以前から保管しておいた年賀状の大方を処分することにしたが、なかには捨てがたいものもある。同じ経験を持つ友人がいて、それを機に、今は幽明界を異にする友人たちの思い出が話題になった

▼そういえば、メーテルリンクの『青い鳥』でおじいさんチルは言う。「生きている人たちが思い出してくれるときに目覚めるんだよ」、「祈るということも思い出すことなんだ」

▼高校卒業時に級友たちに書いてもらった「寄せ書き帳」が残っている。ひとりは書いている。「君と僕との間柄は何ものによっても分かつことができない。友情、これこそが僕が体験した愛のクライマックスである」。友と歌った歌「ふるさとの歌」のプリントも見つかった

▼野尻抱影著『新星座巡礼』を頼りに学寮の屋上で星座を探した。あの星々は今も同じように輝いている。奥深い想像へと誘っている。著者は書いている。「想像から湧く悠久な喜びは、星を知る者のみが知っている。三ツ星よ、シリウスよ、讃えられてあれ!」

▼ソテツの実でつくった目のぱっちりしたかわいらしい人形を、当時中3の女生徒からもらった。先日、人形と作者を半世紀ぶりに対面させたら、人形も彼女も大変喜んでくれた。『少女』という歌がある。「-星より清い目をあげて君振り仰ぐカラマツの林の空は海より青く」

▼複雑な社会の中でも、大方、人の日常生活はささやかで、平板になりがちである。そんなとき、「古きよきもの」たちは、生活の時空を広げ深めてくれる。古きよきものたちよ、称えられてあれ。

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