行雲流水
2016年2月11日(木)9:01
【行雲流水】建国記念日考
きょうは「建国記念の日」で、公休日。諸外国の建国記念日は、18世紀以降の近代国家成立に由来していて、わかりやすい。日本の「建国記念の日」は、なぜ2月11日なのか、ピンと来ない。小学校ではどのように教えているのだろうか
▼2月11日は戦前の紀元節にあたる。紀元節は、「日本書紀」(720年)に初代の神武天皇が即位した日と明記されていることに由来する。戦後は、神武天皇が実在したかどうか定かでないとの説が出たり、神話伝説であっても壮大な夢とロマンがあったという事実は肯定すべきだとの反論が出たりした
▼昭和41年、「建国記念の日」をいつにするかは紛糾し、内閣に設置された有識者会議に委ねられた。10人の委員のうち7人が2月11日を妥当とする意見だったという▼近代国家が成立したという意味での建国なら、「明治維新」がわかりやすい。記念日としては明治憲法発布の日がふさわしいが、この憲法は戦後、否定されているからやっかいだ。古代史なら「大和朝廷の成立」であろうが、日にちを特定することが困難だ。結局、「文献にある」2月11日に回帰せざるをえなかったのであろうか
▼忘れられた〝記憶遺産〟もある。昭和15年秋、「紀元2600年式典」が挙行された。この年1月に発足した米内(よない)内閣が国民的盛事を主宰することを嫌った陸軍は倒閣を画策する。米内首相は日独伊三国同盟反対論者だったからだ
▼陸軍に担ぎ出された近衛内閣は三国同盟を締結し、日本は枢軸路線を歩むことに。歴史に「もし」はないというけれど。