ストーリー持つ観光提言/文化庁地域活性化事業
伊良部島の可能性考える/すまむつシンポジウム開催
伊良部島の可能性と将来のあるべき姿を考える「伊良部島すまむつシンポジウム」(主催・宮古島市文化遺産活用実行委員会)が19日、市伊良部公民館で開催された。基調講演を行った上里隆史さん(早稲田大学琉球・沖縄研究所招聘研究員)とパネラーで参加した地元の仲間明典さん(同委員会長)の2人は、「ストーリー(物語性)を持つ新たな観光」を提言し、地域の観光が点から面へ広がる活性化に期待を込めた。住民ら約60人が熱心に聞き入っていた。
2015年度文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業」の一環で実施した。これまで伊良部の七つの集落を「伊良部・仲地」「国仲」「佐和田・長浜」「佐良浜(池間添・前里添)」と4ブロックに分け、地域資源を活かした体験・プログラムを立ち上げるワークショップを開催。この日のシンポジウムでそれぞれの代表が結果を報告した。
上里さんは、NHKドラマ「テンペスト」などで時代考証を担当し、全国的に著名。この日は「歴史・文化遺産を活かした地域づくり」と題し基調講演を行った。
その中で、上里さんは「水中文化遺産が注目されている。古い時代から佐和田の浜で石で囲んで魚を採っている『魚垣(ながき』は新たな観光の目玉になる可能性を秘めている。伊良部にはいろんな歴史・文化があり、それを掘り起こして日の目を見せ、いかにして活用していくかを考えてほしい。長期を見据えた視点で取り組むことが大事」と述べた。
また、古琉球時代の一端に触れ「本土の史料『異国往来』に、1589年に琉球の尚寧王が豊臣秀吉に金工品、漆器、焼酎とともに太平布500端(たん)を送っているという記録がある。太平布は宮古上布である」と語った。
パネラーは上里さん、仲間さんのほかに、川島秀一さん(東北大学災害科学国際研究所教授)、千住直広さん(那覇市観光協会マネジャー)の4人が参加。コーディネーターは、中村良三さん(プラネット・フォー代表)が務めた。テーマ「伊良部島の宝を掘り起こせ」で独創的な視点・発想で提言した。
川島さんは、下地島の津波伝説に出てくる「よなたま」という「人面魚体」の魚などを説明し「他に類例のない伝説」と語った。
千住さんは、那覇市で首里城公園や国際通り以外での新たな観光に取り組んでいる現況を話した。
会場の一角では、伊良部高校の生徒たちがポスターセッション「地域活性化への一考察」と題して説明した。