野ネズミ被害が深刻化/下地入江地区キビ畑
野そ剤、ヘリでの空中散布訴え
下地入江地区の複数のサトウキビ畑で、野ネズミがキビを食い荒らす被害が深刻化している。収量は例年を下回ることが確実な農家もいて、頭を抱えている。被害を受けた農家の一人は、ヘリコプターから実施していた野そ防除が、昨年から農家で撒く地上散布に変わったことを指摘。「散布はキビ畑に限っており、原野には撒かれない。まったく防除しない農家もおり、畑の一部分にだけ撒く農家もいる」と話し、地上散布では防除に限界があると訴えている。
市はヘリでの空中散布から、農家による人力での地上散布に変更した理由として▽安全面が確保される▽予算が縮減できる▽散布にばらつきが無くなる-ことなどを挙げている。
ヘリでの殺鼠(そ)剤散布は、風向きや天候などの影響で、散布対象外の住宅地や草地、果樹園、道路などに落下していた。
子供たちの手に触れやすいことや、ペット、家畜などが誤飲する恐れのほか、ヘリの低空飛行の危険性も指摘されていた。
ヘリでの散布は、約1760万円の予算が必要で、財政面の観点から見直しが求められていた。
一方、人力での地上散布は、農家が市に申請して実施する。作業量が増えるほか高齢化もあり、体力的な面から全ての農家が申請するとは限らない。
また、野ネズミ駆除は「一斉防除」が有効とされるが、殺鼠剤の散布時期のばらつきや、原野などには撒けない点が懸念されていた。
さらには、殺鼠剤は農作物専用であることから、散布する際には生態系への配慮が必要。このため、原野や山林などへの散布は、法的に問題が生じる恐れがあり、慎重に対応することが求められていた。
野ネズミの被害を受けた農家の一人は「殺鼠剤はキビ畑の周辺だけに撒いた。畑の中にまで撒くのは、体力的に厳しい。まったく撒かない農家もいて、防除対策がばらばらだ」と指摘。「土地改良が進んでいる畑はヘリで散布するとか、民家に近い畑は農家がやるとか、状況に応じた防除方法を考えてほしい」と話した。
市は次年度予算には、ヘリでの空中散布作業委託料は計上せず、「農薬代」のみを盛り込んだ。
市農林水産部の砂川一弘部長は市議会3月定例会一般質問で、「原野などへの散布はどうするのか」などの苦情が農家から上がっていることを報告した上で「平成28年度の防除は、27年度と同様に地上散布での防除をお願いしたいと思っている」と答弁するなど、当面は地上防除で対応していく方針を示した。