行雲流水
2016年5月10日(火)9:01
【行雲流水】(ゴールデンウイーク)
5月の上旬には「国民の祝日」やいろいろな行事があって、平板になりがちな日常生活にメリハリをつけるとともに、社会の現実を改めて考える機会にもなった
▼1日はメーデー。労働者の祭典である。1886年5月1日、アメリカで、8時間労働制を要求して労働者が立ちあがったことが起源である。非正規雇用が常態化するなど、状況は厳しいが、労働者は生活者であるとともに、価値の創造者であることの原点を確認したい
▼3日は憲法記念日。国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を柱とする「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する日」と定められた祝日である。国の成長は、憲法の精神を実現していくことだと読むことが論理的である
▼5日は「こどもの日」。子どもにとって健やかに成長することが最大の幸福である。その際、どんな子どもに育ってほしいか、大人は明確にする必要がある
▼たとえば、司馬遼太郎は『二十一世紀に生きる君たちへ』に、「自己を確立して他人をいたわる人になれ」と書いた。「自己を確立せよ」ということは、付和雷同して国を誤らせた歴史を踏まえた言葉で、自己の考えを持てということである。「いたわりの心」は他人の痛みを自分の痛みと感じる「共感性」のことである
▼8日は母の日。子どもは、人間らしい感情や考え方を母親の無償の愛から学ぶ。本紙「母の日」特集号に掲載された母親のほほえましい似顔絵や感謝のメッセージが胸を打つ。立派に育つことが、子どもの母親への最大のプレゼントとなる。