全国と沖縄で異なる現象/オール沖縄に勢い
今回の参院選は、全国と沖縄で異なる現象が見られた。宮古では保革の差が縮まるなど、県内で翁長雄志知事が掲げる「オール沖縄」の勢いが増している。
全国レベルでは、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の評価が主な争点になった。ここで、安倍政権を支える自民党・公明党は全国的には勢いを見せた。安倍政権の政策は「信任」を得たことになり、首相は本土での基盤を強化した。
ところが、沖縄県内では安倍首相が推す現職の沖縄担当大臣が惨敗した。県内では、アベノミクスの評価はほとんど議論にならず、普天間基地の辺野古移設や、日米地位協定の改定、憲法改正の是非などが争点となった。好調な県経済を背景に大臣としての実績を訴えた島尻安伊子氏は、5月以来の米軍関係者の相次ぐ事件・事故で猛烈な逆風にさらされた。
「オール沖縄」を掲げ、辺野古移設に反対する元宜野湾市長の伊波洋一氏が圧勝したことは、翁長知事にとって、6月の県議選に続く勝利といえる。知事もまた、県内での立場を強めた形だ。
安倍政権と翁長県政、ともに強化された結果、国と県は辺野古移設を巡る対立をどのように解消していくのか。また、沖縄振興への対応はどうなるのか。しばらくは、お互い手探りの状況が続くと見られる。例年では8月末に内閣府が行う沖縄関係予算の概算要求と、その後の折衝も一つの焦点になるだろう。県政が進める「アジアの経済成長の風を受ける」振興策が、次にどう展開するかも注目だ。
一方、宮古地区では離島振興策のほか陸上自衛隊の配備も議論された。宮古への陸自配備に反対する伊波氏は、地元の理解を得ることを条件として賛成した島尻氏に得票数で下回ったものの、県議選に比べると保革の票差は縮まった。県議選での革新系の勢いが、そのまま反映された形になった。
保守陣営は県議選での分裂をどう立て直すか、革新系はこの勢いを持続できるかが課題となる。来年1月の市長選が注目される。