行雲流水
2016年8月30日(火)9:01
【行雲流水】(カント著『永遠平和のために』)
NHKが、今月の「100分de名著」の放送で取り上げているのはカントの『永遠平和のために』である。テキストでは、カントの思想を萱野稔人が読み解いていく
▼カントの残した有名な言葉がある。「繰り返し、じっと反省すればするほど常に新たに、高まりくる感嘆と畏敬の念をもって心にしみるのが二つある。わが上なる星の輝く空と、わが内なる道徳律とである」
▼彼は道徳の根拠を、習慣や文化などではなく理性におき、理性が道徳法則を人間に与えると考え、個人には、意思が普遍的立法に合致するように行動することを求め、このことを、命令する「定言命法」を道徳の本質と考えた
▼カントは、「人格は目的であり、手段として扱われてはならない」と同じように国家は道徳的人格であり、それ自体が目的である。手段として、他国から支配されてはならない
▼世界国家か国際的連合かということになるが、世界国家は強国が自国の言語と価値観を押し付けて小国の権利を剥奪するようになるとこれを否定し、各国が立法と行政の分離した民主的(協和的)体制を確立し、対等な立場で法律をつくり、諸国家が共通の法に無条件に従っている「公法の状態」をつくることが、永遠の平和の実現につながるとカントは考えた
▼もともと人も国も、理性だけでなく利害を求めるので、平和への道は遠く厳しいが、実現しなければならない課題である。「汝の意思の格律(行為の基準)が常に同時に普遍的立法の原則として妥当するように行動せよ」(カント)。