泥を塗って厄払い/島尻でパーントゥ
逃げる住民の「悲鳴」響く
国指定重要無形民俗文化財の奇祭「平良島尻のパーントゥ」が6日、島尻集落で始まった。つる草を全身に巻き付け、泥を塗った3体の「パーントゥ」が住民や観光客に泥を塗りつけて厄をはらった。夕刻から日が沈むまで、集落内にはパーントゥから逃げ回る人たちの「悲鳴」が響いた。伝統の奇祭はきょう7日まで。
パーントゥが集落のはずれにある「ウマリガー」から姿を現したのは午後5時すぎ。周辺で待ち構えていた人たちは「来た!」と声を上げ、ゆっくりと歩く3体を見守った。
近くまで来ると、パーントゥは突然走り出して住民たちを追いかけ回し、全身に泥を塗りたくった。
集落に入ると、まずはムトゥであいさつをした。地域の先輩たちに泥を塗りながら酒を酌み交わした。
ムトゥを出ると、パーントゥは大暴れ。集落内を走り回り、老若男女お構いなしに泥を塗りたくった。建物や改築された家の庭にも入って泥を塗った。
地域住民や集落外から訪れた人たち、観光客の多くは、懸命な表情で逃げまどいながらも伝統行事を満喫している様子。一方で、小さな子どもたちは泣き叫びながらパーントゥの存在そのものに怯えていた。
毎年家族で訪れている稲垣聖司さんは、1歳の娘の千花ちゃんが「泥を塗られて本当に良かったです」と自身泥だらけの顔の表情を緩めた。「これで今年も元気でいられると思う」と話して喜んでいた。
パーントゥは、数百年前に島尻の海岸に流れ着いた仮面を男がかぶり、集落内を走り回ったことが始まりとされている。当時の村人たちは、流れ着いた仮面が海のかなたから訪れた来訪神として崇拝した。