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人生雑感
2016年11月29日(火)9:01

【人生雑感】年々増加し陰湿化している児童虐待の問題点と、その防止策について

沖縄国際大学名誉教授 福里盛雄

1 児童虐待の発生要因は、家庭の崩壊の具現化である

(1)児童虐待とは、児童に対して次の行為がなされた場合を言う。
 ①ネグレクト、保護放棄
 ②身体的暴力
 ③精神的虐待
 ④性的虐待
 子が、幸せに生きていくために大きな役割を果たすのは、家庭であり、家庭の温かい愛情です。特に、人の子は、他の哺乳動物の子と比較しても、未完成で生まれてきます。他の哺乳動物の子が、生まれて数時間でできることが、人の子は数年も必要とするからです。

 家庭が崩壊すると、その家庭は本来の機能を失います。従って児童は温かい監護教育が受けられない状態になり、その家庭の児童は人間として生きていくためには多くの困難を背負わせられることになる。
 家庭が崩壊すれば、父と母は精神的に不安定になり、ついに児童への虐待につながる傾向が強いのです。児童虐待の多くは実父母によってなされています。
 また、実父母に代わって幼児を監護教育する権限を有する後見人が児童を虐待する場合もあります。いずれにしても、これらの人は被養護者とは血のつながりのある身内のものです。実父母以外のものが、児童を監護教育する場合も、家庭の崩壊が生じた場合であるといえます。
 さらに、実母が連れ子のまま再婚したり、内縁関係を営んだ時、相手配偶者である夫が児童を虐待する事件も多いのです。児童虐待は、家庭の病理的現象の具体化と言えるのではないでしょうか。子が心身共に健やかに育つためには、家庭の愛情が必要。

2 児童虐待がされた場合、感知しやすい機関

 虐待は家庭内で行われるので、外部からはなかなか気がつきにくいのです。特に幼児が被害者の場合は本人自身から外部に訴えることは、いろいろな点で子に不利益が生ずるので児童はそのことを外部に言わない。それで、外部から虐待行為があることに気がつきにくい。
 しかし、次の機関は、そのことについて気がつくことが容易です。
 ①保育園、幼稚園、学校の先生②隣人③医師、保健所④警察⑤児童相談所
 これらの機関は、児童虐待の兆候があるときは、早急に、適切な機関へ情報を提供すべき義務を負っています。情報の提供が遅いために、尊い幼い命が失われる場合が多いのです。
 情報を受けた側は、できる限り早く、それに対して適切な行動をしなければなりません。情報がないため、あっても早急に処理しなかったために、時遅しとなって後でいくら悔やんでも取り返しがつかないのです。自分の身内の者が虐待を受けていると同じ気持ちで敏速に行動をしなければなりません。
 一般人も、「子どもが虐待されていることを知った者は、誰でも福祉事務所か児童相談所に通告しなければならない」(児童福祉法第25条)。
 虐待児童の保護制度は、①一時的保護②養護施設入所③乳児院があるが、一時的保護には親権者の同意は必要でないが、養護施設への入所には親権者の同意が必要である。
 この点に関して親権者の監護教育権が大きな壁となる。もちろん、親権の喪失宣告制度があります。制度として、親の病的虐待の習性の治療制度や親と子の育成に対する訓練制度(親業訓練講座)を設けたり、親が幸せな結婚生活を営む能力を付けてあげることが必要ではないだろうか。
 児童虐待の防止策は、児童虐待が発生してからではなく、虐待が発生しないようにその根源を未然に取り払い、楽しい明るい健全な親子関係を創造したいものです。

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