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行雲流水
2016年12月29日(木)9:01

【行雲流水】(暮れ)

 今年も余すところあと3日。生活、仕事、付き合いは人それぞれだが、影の主役は実は「時間軸」かもしれない。「時と場合によっては」との慣用句があるように、なかには人生を左右する大事な「時」もある。「いそがしく時計の動く師走かな」(子規)

▼押し詰まってくる年の瀬は、まさに時間との勝負。これまで無為に過ごしてきた「時」をうらめしく思ったりする。「日 暮れて 道なお遠し」と嘆いた昔の人の気持ちが分かるような気分にもなる

▼「就活」ならぬ「終活」という言葉がはやったのは5年前。日本人男性の健康寿命(施設の世話にならない平均年齢)は80歳だという。対数グラフの目盛りの幅が狭まってくるような切迫感を感じる人も多いのでは。残りの期間を思索で深めるのもよし、趣味に生きるのもよしというところか。「旅寝よし宿は師走の夕月夜」(芭蕉)

▼子規は現役世代、芭蕉は年金世代の心境を詠んだのかも。もっとも、芭蕉の生きていた時代には年金制度はなかった。が、心は現代人より豊かだったのかもしれない。今年は年金制度改革法案が国会で可決されるなど年金世代にとっては先行き不透明感の漂う年でもあった。芭蕉の〝心のゆとり〟にあやかりたいものだ

▼「先進国」欧米でもEU離脱騒動やトランプ旋風など、〝ゆとり〟のない世界になってしまった感がする。我意を張り合う世の中の行く末は神仏のみぞ知る。黙って祈るのも一興かも。「ともかくも あなた任せのとしの暮れ」(一茶)

▼良いお年をお迎えくださいますように!

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