行雲流水
2017年6月20日(火)9:01
【行雲流水】(平和の使徒・大田昌秀)
大田昌秀元知事は、沖縄戦の悲惨な体験を原点に、県政の柱に「平和・共生・自立」を揚げ、基地のない平和な沖縄と自立経済の構築に全力を注いだ。また、研究者として沖縄戦の解明と、沖縄戦後史の研究を重ね、その学問的真理をベースに平和と共生の世界を求めて、国の内外に発信し続けた
▼敵味方、国籍を問わず沖縄戦全戦没者の名前を刻んだ「平和の礎」は、平和と世界の共生を求める象徴として、世界の人々に感銘を与えた。今年4月、ノーベル平和賞候補にノミネートされたゆえんである
▼大田氏は「平和の礎」の除幕式であいさつしている。「平和の礎を建立したのは何よりも平和を大切にし、共生を志向する沖縄の心を広めるためだ。落成を契機に年前の鉄の暴風を平和の波濤(はとう)に変え、この地から温かい平和の息吹が確実に世界へ波及することを心から祈願する」
▼ところで、国土の0・6%の沖縄に70%以上の米軍基地が米国の世界戦略と軍需産業のために置かれ、自然や生活環境破壊と人権が蹂躙(じゅうりん)されている。他府県や米国内だったら決して許されることではない
▼この不条理に対して大田氏は日米と正面から対峙し、基地の整理縮小を訴え、沖縄に苦悩を押しつける日本政府や国民意識を批判し続けた
▼6月12日の誕生日に大田氏は亡くなった。教え子たちの歌う「ハッピーバースデー」を聞き終えた直後だったという。大田氏のご逝去を悼み、県民こぞってその遺志を受け継ぎ、平和と共生の世界実現のため、決意を新たにしたい。