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行雲流水
2017年8月29日(火)9:01

【行雲流水】(『幸福の王子に』)

 オスカー・ワイルド著『幸福の王子』の像が小高い丘に立っていた。その下に一羽のツバメが飛んできて止まった。すると、王子の目から涙が落ちてきた。王子は言った。「私は生きているとき、この世に不幸があることを知らなかった」

▼王子はツバメに病気の子どものもとに剣からはずしたルビーを届けさせる。さらに、不幸な人々のために来る日も、来る日もツバメに頼み、とうとう両目のサファイアも胴体の金箔も失くしてしまう

▼ツバメは暖かい国に帰る時期を逸して像の下に落ちて死んでしまう。輝きを失くした王子の像は溶鉱炉で溶かされるが、鉛でできた心臓は融けずに、ツバメが死ぬ瞬間、二つに割れてツバメの傍に捨てられる。両者は神様に召され、楽園で永遠に幸福になった

▼宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』のブドリは火山局の技師となる。ある年、イーハトーブ(理想郷、岩手)が深刻な冷害に見舞われる。彼は、「火山を人工的に爆発させることで、大量の二酸化炭素を発生させ、その温室効果でイーハトーブを暖めよう」と提案する

▼ところが、有力博士の見積もりでは、その実行には誰か一人は噴火口にいることを要した。結局ブドリが最後の一人として残った。ブドリが火山を爆発させると、冷害は食い止められ、イーハトーブは救われる

▼王子もブドリもすべての人の幸せを命をかけて守った。反対に、自分(組織、国)のことで他を犠牲にする政治家や官僚の行動が近年目に余る。彼らは、真の意味で、「不幸な人々」である。

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