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私見公論
2017年10月27日(金)9:01

【私見公論】宮古の農業振興について考える③/平良正彦

農業振興における品種の貢献

 宮古島市熱帯植物園の正面から奥の方へ行くと高台の途中に歌碑があり、そこに「見わたせば、甘蔗のをばなの出揃いて、雲海のごとく、島をおほへり」とある。宮古島の歌人、宮国泰誠氏が昭和45年に作られた歌である。

 当時の甘蔗(サトウキビ)の品種はNCo310がほとんどで、ちょっとした高台からはサトウキビ畑が見え、11月の中下旬頃にもなると、綿のような銀色の穂が一面に広がりまるで雲海のようで綺麗であった。NCo310は、昭和32年に奨励品種になり、その後約30年に渡って主流品種として宮古の糖業を支えた。

 しかし、昭和60年に低ブリックス問題が起きたことをきっかけに糖度の高い品種が求められ平成6年産からは、それまでの重量による取引から品質取引へと変わったため、NCo310は次第に減少し他の品種へと替わっていった。

 サトウキビの品種は、収量が多くて糖度の高いものが求められる。穂が出るキビは出穂するとそこで茎の成長が止まってしまい収量面では不利となることから、次第に品種は、穂の出るキビから穂の出が少ないキビへと替わって来ている。
 そのため、現在はサトウキビの穂が出揃い雲海のごとくといった風景を見ることはできなくなっている。

 サトウキビの品種を創出するのには約10年の年数がかかる。NCo310以降、数々の品種が作られ栽培されてきたが、その中でも印象に残り活躍した品種を幾つか紹介しよう。

 先ず、農林8号は糖度が高く、茎も太く、収穫しやすかったため普及した。農林9号は、茎数が多くて良く伸び多収で糖度も高く普及した。特に多良間島では多くつくられたが、黒穂病に弱かったため、一気に減少し農林15号に替わった。15号は、細茎で茎数が多く高糖多収だが株出に欠点があった。替わって農林27号は茎が太くて茎数も多く高糖多収だが春植では台風に弱いので注意が必要である。現在、宮古で栽培されている主要な品種は多い順に農林27号(72%)、農林25号(9%)、農林21号(7%)である。最近、太くて良く伸びる新品種「RK97-14」が出てきた。

 かんしょの品種、最近は、加工用として紅芋(紫いも)が多く栽培されるようになっている。紅芋の先駆は、宮農36号で宮古で育成された。現在は、ちゅら恋紅、備瀬、沖夢紫などの紅芋がつくられている。他には、黄色い芋などもありお菓子や焼き芋で利用されている。また、葉っぱも芋も美味しい品種(ちゅらまる)がある。

 ゴーヤーの品種、昔は、実の形がばらばらで雑多な種が栽培され収量も低かった。規格や形が揃ってないと箱詰めや市場評価で不利であったため、沖縄県で品種開発を進め、形の揃った品種、群星が生まれた。また、低温期でもいぼ形成のよい品種(汐風)も生まれた。最近は、尖ったいぼから、折れにくい丸っこいいぼの品種(てぃだみどり)が出てきた。

 マンゴーの品種、当初は外国から、アーウィン、センセーション、へーデン、キーツなど数種の品種が導入されたが、今はアーウィンが主体となっている。他に夏小紅などの品種が出てきた。

 生き残れるものは、強いものでもなく、賢いものでもなく、変われるものである(進化論)。農作物の栽培にも同じことが言え一つの品種だけでは生き残れない。品種に求められるのは収量、品質だけではなく気象災害、病害虫発生、機械化、変化する人々の好みにも対応できるものでなければならない。

 これまで品種は数多く作られ栽培されてきたが、万能で永久なものはなく、その時代、時代で役目を果たして消えている。

 そのため、品種の開発は大切で絶えず新しい品種を創出し準備しておく必要がある。多くの国で品種開発は行われ、種を制するものは世界を征すという言葉もある。

 沖縄県はこれまでサトウキビ、かんしょ、ゴーヤー、パインなどの品種開発に取り組み優れた品種を創出し沖縄の農業発展に寄与してきた。宮古農業にとっても品種の貢献は大きく、昨年のサトウキビが豊作になった要因の一つは品種のおかげである。

 宮古の産業まつりのサトウキビ品種コーナーは毎年黒山の人だかりになる。マンゴーはもっと美味しくて、作りやすく収穫期間を延ばせる品種はないかとの要望があり、他の作物においても品種に対する関心は高い。それだけ品種は農業にとって重要な役割を果たし大切なものなのである。

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