行雲流水
2017年11月21日(火)9:01
【行雲流水】(ラッセルに学ぶ)
ある町で、以下のような床屋がいる。自分でひげをそらない人全員のひげをそる。自分でひげをそる人のひげはそらない。このとき、床屋自身のひげは自分でそる? 床屋が自分のひげをそる場合もそらない場合も矛盾が生ずる。「ラッセルのパラドックス」と呼ばれるもので、以来、論理学と数学基礎論に大きな影響を与えた
▼ラッセルは語る。「若い時、夕陽を眺めながら自殺を考えた。でも結局自殺はしなかった。もっと数学について知りたいと思ったから」
▼第1次大戦が起きたとき、英国民が参戦に歓喜する姿をみて、人間の非合理性を知り、研究を政治学に変え、平和活動を始める。そのため大学の講師を解任され収監までされる▼しかし、その人道的な理想や思想の自由を尊重する多様で顕著な著作群が評価され、1950年ノーベル文学賞を受賞した
▼1955年には、親交のあったアインシュタインと「ラッセル・アインシュタイン宣言」を発表した。宣言にいわく「全体の破滅を避けるという目的は他のいかなる目的に対しても優先されなければならない」。この宣言は「パグウォッシュ会議につながり、東西両陣営の科学者が反核を訴えた。なお、日本では湯川秀樹を中心に「京都会議」が結成され、同運動が展開された。冷戦下、マッカーサーが中国に対する核攻撃を大統領に進言、キューバ危機では沖縄の核基地が臨戦態勢にあった
▼現在の世界は経済至上主義で、平和をめぐる条件は悪化の一途をたどっている。今こそ、ラッセルに学ばねばならない。