【私見公論】宮古の農業振興について考える④/平良正彦
安全安心で持続可能な農業と地産地消
2020年に、東京オリンピックが開催される。世界中からアスリートや観光客が、日本を訪れ交通機関、宿泊施設を利用し買い物や食事をする。その経済効果はとても大きなものであろう。
ここで選手村の食堂に提供する食材であるが、今まで通り生産した農産物を供給するという訳にはいかないようである。なぜなら、オリンピックに提供できる食材はGAP(ギャップ)認証を取得している生産者の農産物でなければならないからである。この動きは2012年のロンドンオリンピックから求められ、2016年のリオオリンピックでも取り入れられている。
GAPとは、Good Agricultural Practice(グッドアグリカルチュラルプラクティス)の頭文字をとったもので「農業生産工程管理」と訳され、農業生産において、食品の安全、環境の保全、労働の安全などのためにする取組のことで、取組事例としては、農薬の適正使用と保管、適切な肥料のやり方や廃棄物の適正な処理、機械や設備の点検整備などがある。また他にも、人権保護、農場経営管理などの項目がある。
日本のGAP認証取得状況は国内農家の1%程度と少なく、このままでは、オリンピックに日本の食材が提供できなくなる恐れがあるという。そのため、国は生産者にGAP認証取得を勧めている。
一方、宮古のGAP認証取得状況であるが、今のところ取得者はいないようで、数件が取得に向けて取り組んでいるという。ファーマーズや市場へ出荷している農家は、防除日誌の記帳と農薬適正使用が義務づけられているので、GAPの必要性やメリットを認識した農家が少しレベルを上げていけば、GAP認証取得は技術的には難しくないと考えている。しかし、認証取得や維持にコストがかかるため個人での取得は容易ではない。
そのため、生産部会などグループでの団体認証取得で、個々の生産者の負担を軽減する方法を検討したらどうかと思う。GAP認証は世界的な流れとなっており、そのうち、日本の市場においてもGAP認証が求められる時代が来るかもしれない。持続可能な農業を達成し消費者から信頼を得てブランド産地になっていくためにも、今から取得に向けて準備をしておくことは大切なことだと考えている。
持続可能な農業には、担い手育成も必要、生産環境面で持続可能を達成できても人の継承ができなければ持続可能な農業はできない。
近年は高齢化が進み、農業の担い手確保が課題となっている。そのため、宮古では、市村、JA、県、指導農業士らが協力して担い手育成に取り組んでおり、就農相談や農業研修生の受け入れ、就農に必要な情報提供など栽培技術や施設整備の両面から支援を行っている。その効果もあって、近年は毎年70人前後の新規就農者が生まれ、そのうち45歳未満の青年農業者は40人程度である。青年農業者の数は毎年少しずつ増えてきて329人となっているが、それでも全農家の約5000人から比べると7%と少ない。
そのため、関係機関の他に生産組織や集落の力も借り地域ぐるみで担い手育成に取り組むことが必要だと思う。
地産地消とは、地域で生産されたものを地域で消費することである。宮古の秋から春にかけての期間は野菜を作るのには適しており、これからは地元産のキャベツ、カボチャ、タマネギ、にんじん、大根などがファーマーズやスーパーに現れる。県外からの野菜に比べて地元産の野菜は安いので、家計が助かり嬉しくなる。比べて夏場は、地元産は激減し県外産がスーパーに並ぶ。夏場は高温と台風の影響で野菜を作るのは難しいが、高温は品目や品種で対応し、台風は防風林や施設の強化など工夫し生産をしていただきたい。人によって好みは違うが、私はパパイア、トウガン、葉っぱの美味しいイモ(ちゅらまる)など地元の野菜をもっと食べようと考えている。
ところで、牛乳も地産地消の一つである。地元の牛乳は美味しい。スーパーの棚からは地元のものが真っ先になくなり、買えない時もある。地元牛乳の愛飲者としては、宮古の将来を担う子供たちのためにも地元の牛乳が継続してスーパーに並び、給食に提供されることを切に願っている。「うしさんありがとう」といつまでも言えたらと思う。
人も物も文化も自然もいろいろな面で地元を大切にしたい。
そして、明日の元気な宮古農業のために関係者の皆さん〝がんばりましょう〟
(沖縄県農業研究センター宮古島支所長)