行雲流水
2018年2月27日(火)8:54
【行雲流水】(宮古島文学賞)
宮古島市文化協会主催、宮古島市、宮古島市教育委員会共催の第一回宮古島文学賞の授賞式・祝賀会が開催された
▼応募作品229点(宮古島市から36点)のなかから一席に選ばれたのは、神津キリカの「水靴(すいか)と少年」である。水の上を歩ける靴に憧れる少年のたどる人生を描いたファンタジーである。もりおみずき審査委員は「面白い作品で、オリジナリティーがあって、現代の人の生き方まで暗喩するような作品である」と評している
▼二席は小池昌代の「匙(かひ)の島」である。ある日、東京から3人家族が移住してきた。その後、起こる不思議な現象を、島の伝承と関わらせて描いている。小池さんは語った。「日本の古い歌謡が息づくこの島に、もう一度書くようにと肩を押された」。佳作の長野和夫の「笹舟」は、島の厳しい現実のなかで、主人公の懸命に生きる姿とロマンスを描いている
▼宮古出身の森田たもつの「蝉衣に吹く風」と玉元清の「笛吹川」が佳作に選ばれたことは、地元に大きな影響を及ぼす
▼宮古には古来、口承文芸や英雄叙事詩などが伝わる。市文化協会は、その礎の上にさらなる文学の振興を図る。一席の神津は語る。「島は世界につながっている。その特性を生かす道具として水靴を思いついた。その際、宮古の美しい自然をイメージした」。三名の審査員は、今回の応募作品は多彩で非常に質が高いと評している。いずれも、宮古島文学賞の発展に希望を抱かせる
▼関係者の労を多とし、「宮古島文学賞」の着実な歩みを期待したい。