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行雲流水
2018年3月6日(火)8:54

【行雲流水】(がんばれ、コペル君)

 80年前に出版された吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』の漫画版と新装版が出版され、世代を超えた多くの人に読まれている。主人公の少年が、叔父との対話やノートに書かれたメッセージから示唆を受けながら、人間の生き方を考え、成長していくことが主題である

▼叔父は好奇心旺盛な少年をコペルと呼ぶことにした。コペルニクスのコペルである。地動説を唱えたコペルニクスは、天動説を唱える人々によって迫害され、認められるのに長い年月を要した。叔父は書く。「人間も自分中心に、ものごとを考える傾向が強い。それでは、真理を知ることはできない」

▼コペルが、卑劣や下等、ひねくれを否定することを叔父は評価するが、それだけではダメで、消費生活に甘んずることなく、より高い生産的な生活が大切で、そのためには学問が不可欠であると説く

▼貧困、いじめ、友情、学問のことなど、今もあるテーマについて、コペルは社会や生活の現実を直視して、考える

▼あるとき、コペルは、友人たちが上級生からいじめを受けたらみんなで立ち向かおうと約束したが、いざという時に出ていく勇気を持てなかったことを悔やむ。そこから立ち直っていく過程でいろいろなことを学び、成長していく

▼著者・吉野は岩波書店の雑誌『世界』の初代編集長。平和と民主主義擁護のために活躍した。この本は、軍国主義時代の検閲を潜り抜け、人々が「時流に流されず、自ら考え行動する人間になる」ことを願って書かれた。池上彰や宮崎駿などの愛読書でもある。

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