行雲流水
2018年6月5日(火)8:54
【行雲流水】(海から豚がやってきた)
子どもの頃、飼っていた犬が売られて、悲しんだことがある。その頃、戦災で犬さえもいなくなった沖縄本島に宮古から犬が移出されていた。売られた僕の犬は、船で那覇に運ばれるはずだったが、桟橋で逃げて、泳いで帰ってきた。濡れた頭をなで、チクチクと名を呼ぶと、犬はうれしそうに尻尾を振った
▼沖縄本島には豚も海からやってきた。戦後の食糧難の時代、沖縄の食文化に重要な豚の飼育数が激減していた。その窮状を救おうと、ハワイの県系の人々が豚550頭を贈ってきた。ウチナーンチュ(沖縄人)の絆を象徴する逸話である。うるま市には「海から豚がやってきた記念碑」が建立されている
▼沖縄は戦前、戦後、どの都道府県よりも移民が盛んに行われた。移民初期には過酷な労働にあえいだが、ハワイで県系の知事が誕生するなど、移住地の生活に適応して暮らしている。また、食文化や、芸能など、沖縄の文化を継承、沖縄県系であることを誇りにしている
▼その沖縄にゆかりのある人々を結びつけるネットワークをつくりあげる目的で、1990年から5年おきに「世界のウチナーンチュ大会」が沖縄で開催されている。第6回大会には20カ国から5200人が参加した
▼また、2012年から、毎年「世界の若者ウチナーンチュ大会」が開催され、交流を深めている。今年はペルーで開催された
▼もともと首里城の「万国津梁の鐘」に刻まれているように、沖縄は万国のかけ橋として栄えた。その伝統をふまえて、平和のうちに、世界に開かれて発展する沖縄でありたい。(空)