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行雲流水
2018年6月28日(木)8:54

【行雲流水】(貿易戦争)

 トランプ大統領が貿易戦争を仕掛けている。歴史の歩みに逆行する動きをどう読めばよいやら。世界の貿易秩序が乱れる兆しか、米国の凋落の始まりか、はたまた単なる〝かけひき〟にすぎないのか

▼第1次世界大戦の経済的背景には、原料入手や商品販路をめぐる勢力圏争いがあった。第2次世界大戦前には、ドイツに課した過大な賠償金や世界経済恐慌がもたらした社会不安があった。太平洋戦争直前にはABCD包囲網といわれる対日経済制裁(石油供給禁止)もあった

▼戦後は、他国をかえりみない経済政策を採用するとどうなるかを反省。WTO(世界貿易機関)の設立やGATT(関税及び貿易に関する一般協定)の締結など、世界貿易秩序の確立に努めてきた

▼とはいえ、経済は生きものだ。日々変動する為替相場のもとでは国家間あるいは産業間に貿易摩擦が生じる。それでも、「自由貿易は世界の富を増進する」との基本路線は維持されてきた

▼その副作用でもある南北問題(先進国と発展途上国との経済格差)が生じると、先進国が発展途上国を支援する枠組みができた。ODA(政府開発援助)制度の創設だ。ODA予算額の世界ランキング第1位は、2000年までは日本だったが、現在は米国だ

▼このような流れに逆らって、トランプ大統領は〝発展途上国並み〟の主張をしている。「アメリカ第1主義」の波紋は大きい。名指しされた中国やEUは、米国製品に対し報復関税を課すという。「歴史は繰り返す。1度は悲劇として、2度目は喜劇として」(カール・マルクス)。(柳)

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