行雲流水
2018年8月28日(火)8:54
【行雲流水】ひょっこりひょうたん島
宮古では、1967年OHK(沖縄放送協会)によってテレビ放送が開始された。待ちかねていた島民は二つの番組にいきなり魅了された。一つはNHK朝の連続テレビ小説「旅路」で、日色ともゑがヒロインを演ずる、心温まる物語で、もう一つは井上ひさし原作の人形劇『ひょっこりひょうたん島』であった
▼♪「丸い地球の水平線に何かがきっと待っている/苦しいこともあるだろさ/悲しいこともあるだろさ/だけど僕らはくじけない/泣くのはいやだ、笑っちゃおう」と歌うテーマ曲の響きが懐かしい▼井上ひさしは親を早く亡くし、児童養護施設に預けられ、施設から高校に通い、上智大学に進学した。『ひょっこりひょうたん島』には、彼の心情や思想が反映されている
▼彼の特長は温かいまなざしとユーモアで本質に迫ることにある。彼は書いている。「笑いで涙を減らしたい」。『吉里吉里人』(きりきりじん)では、日本の農業軽視政策と憲法軽視の動きに反発、東北の寒村が日本からの独立を宣言する。この作品は日本SF大賞と読売文学賞を受賞した
▼五木寛之は彼を「平和憲法と民主主義を守る希望の星」と語った。長田育恵はもらった言葉、「しなやかな心で、健やかに生きること。隣り合う人と手を携え笑い合うこと。目に見えないものに心ふるわせ掬い取ること」などを、「祈りにも似た言葉」に書いている
▼第14代日本ペンクラブ会長、文化功労者、芸術院会員でもあった大物だが、誰をも大切にしたと、いろいろな人に、敬意をこめて語られている。(空)