行雲流水
2018年9月20日(木)8:54
【行雲流水】(キャッシュレス社会)
南大東島の農家では、昭和40年代まで通貨が不要だったという。生活用品は、大東糖業直営の売店から「通い帳」で調達できた。1年間分のツケは、サトウキビ代金支払日に清算される仕組みだった
▼製糖会社と住民は信頼感で結ばれ、島全体に一体感があった。その意味では、暗黙の契約が完全履行されるユートピアだったといえなくもない
▼復帰後は、人、物、金、情報が行き交う社会になった。運命共同体の〝むら〟から利便性を追及する〝まち〟へと変貌した。各種のサービスや商品を提供する事業所ができた。土を使わず、水と肥料をパイプで供給して野菜を育てる工場まである。今では、住民1人当たり平均所得が最も高い自治体の一つになっている
▼世の中は変わる。2~3年前まで、那覇のバスの中ではバス賃支払いでもたつくお年寄りの姿をよくみかけた。今は各社共通のプリペイドカード「オキカ」の出現で、昇降口の混雑はなくなった。お年寄りも高校生もICカードをタッチするだけでサッサと乗り降りしている
▼カードによる決済は身近なものになりつつある。さらに、スマホの普及で加速化しそうだ。決済のキャッシュレス化の現状は、日本18%、中国60%だという
▼宮古島でもクルーズ船客を対象にキャッシュレス決済の実証試験が始まった。約200事業所が参加するとのこと。市民を含む国内客向けシステム構築をも見据えた取り組みを期待したい。宮古島が「キャッシュレス化先進地」の地位を獲得できれば、イメージアップ効果は大きい。(柳)