行雲流水
2018年12月13日(木)8:54
【行雲】(主観と客観)
寒くなると思い出す。20年ほど前の初冬、北京郊外の万里の長城へ行ったことがある。駐車場から長城までは徒歩で5分、山道を登らなければならない。バスを降りたとたん、寒風にさらされた
▼耳が痛い。「防寒帽」の売り子が寄ってきて、1個1000円だという。急いで買った。長城の入り口に着くと、2個1000円だという。ここで買う人々は「あわてる乞食はもらいが少ない」と言わんばかりの笑顔。先に買った人々は渋い顔
▼長城見物を終えて駐車場に戻ると、さっきの売り子が平然と3個1000円だと言っている。皆、「だまされた」思いでバスに戻った。日本人は、売価=コスト+適正利潤(10%程度)と思い込んでいる
▼中国人は、売価=買い手の評価価格、つまり買い手の主観的な価値判断だと思っているようだ。中国では、取引の常道かもしれない。帰りのバスの中での議論は、そんなところに落ち着いた
▼説得力のある説明は、歌手やスポーツ選手の報酬、絵画の値段はどうやって決まるかとの話だった。経済用語では効用価値説というとのこと。「三国志」や「水滸伝」などで培われた民族性かもしれない
▼ひるがえって、沖縄の県民性が気になった。芸能や政治の分野が得意だという。情念の世界だ。合理的思考が必要な経済や法律の分野は不得手のようだ。中国式商法(たとえば朝貢貿易)の影響だろうか。そういえば、現代の砂糖価格も政治主導だ。あるいは、自給自足の離島ゆえに、広範な商取引が発達しなかったためなのか。いまだに「解」を見いだせないでいる。(柳)