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私見公論
2018年12月21日(金)8:54

【私見公論】菊野 日出彦/大きなイベント、学会を終えて

-宮古島の農に関わる方々の想いについて-

 先月の11月25日、JAおきなわ農業情報管理センターで「実践総合農学会第13回地方大会」が開催された。宮古島での開催ということで私も準備に関わり、沖縄県・宮古島市・JA・宮古総合実業高校、そして農家や民間企業など多くの方々のご協力のおかげで無事に学会を終えることができた。

 学会の基調講演では、私が「宮古地域における農業特性と新規作物の導入による農業振興の展望について」というタイトルで話題提供をした。宮古島の農業の概観と新規作物としてこれまでにご紹介したヤムイモやその成果品としてのヤムイモ焼酎「ずみ」などについてである。今回は私の話はこれくらいにして、皆さんにもっと伝えたいことがある。

 学会の感想を一言でまとめると「宮古島の農に携わる人の想いは熱い」というものであった。その想いは会場のその時でしか味わえないが、今回は皆様にそこで語られたことについて断片だけでもぜひお伝えしたい。

 今回のシンポジウムの大きなタイトルは「宮古地域における新規就農者の確保をめぐる現状と展望 -担い手育成による農業振興と地域活性化を目指して-」であった。 

 先発として宮古農林水産振興センター農業改良普及課の渡慶次努氏に「新規就農に関する支援対策」として新規就農の現状とそれに関わるさまざまな支援対策などについてお話を頂いた。県・市・JAと農業士が新規就農者に対して連携支援をしていると強く感じた。

 次の報告では、ユートピアファーム宮古島の上地登氏が自身のこれまでの人生をかけた「『農業』その限りない可能性への挑戦」について大変ユーモアのある語りで紹介された。まだマンゴーがほとんど知られていない時期から導入を始め、栽培技術の問題を克服すると、そこには売り先のないマンゴー、観光農園開園後の台風による被災、数々の辛苦を乗り越え、現在では多くの観光客が訪れるユートピアファーム宮古島があるということ。強く心を打たれた。

 最後に、若手新規就農者のJAトウガン専門部会の重田康行氏に「就農定着プロジェクト」について話していただいた。いかにして地域に溶け込むか。人脈を広げることの重要性を強調していた。私も地域ではまだ新規であるので、共感を覚えた。

 次の座談会では「地域農業の取り組み」という題で、川満長英氏(上野地区さとうきび生産組合)、来間正博氏(JAゴーヤ専門部会)、米田隆己氏(島の駅みやこ)の3名が現場の農業の現状と課題、そしてこれからについて語った。 

 
 篤農家の川満氏はサトウキビ栽培の技術と将来の担い手の確保の重要性について語った。ゴーヤ生産農家の来間氏は冬場のゴーヤの販促の必要性や静かなブームが来ている山羊の面白さを伝えた。島の駅みやこの米田氏は、「宮古島では夏はマンゴー・冬はメロン」を強調した。

 この学会の大きな特徴として、学会開催地の地元高校生による研究発表がある。今回は、宮古総合実業高校の生徒に発表していただいた。仲元竜斗君他6名による「有機質肥料(バイオ・リン)におけるリン増殖製造工程の流れ」と仲間志央里さん他5名による「宮古島に眠る野菜の可能性~ナンコウカレーパン作りに挑戦」について研究発表をしていただいた。宮古島の環境と素材、そしてニーズを高校生の柔軟な視点から捉えた研究と感じた。特にナンコウについては宮古島の大人、特に私も含む中年男性世代の問題である「肥満」に対する課題として研究を始めた。バイオ・リンも含め今後の成果に期待したい。

 私の講演のまとめとして、右肩上がりで増加する観光客などの流入人口により、宮古島の農業は高い可能性を持つこと、新規作物の導入による農業振興の可能性があることを伝えた。そしてさらに一言付け加えた。「美しい宮古島を守りつつ農業振興を」と。

 宮古島の農に関わる方々の熱い想いをこれからも次の世代につなげてほしい。
(東京農業大学教授)

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