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行雲流水
2019年1月22日(火)8:54

【行雲流水】(アガサ・クリスティー賞)

 第8回アガサ・クリスティー賞をオーガニックゆうき(本名上里叶子)が受賞した。受賞作品は『入れ子の水は月に轢かれ』である。アガサ・クリスティー賞は、名探偵ポアロが活躍する『オリエント急行殺人事件』等の作者で、「ミステリの女王」と呼ばれるアガサ・クリスティーを記念して早川書房によって創設されたものである

▼戦後、那覇の平和通りに平行するように西側のガーブ川の上に粗末な商店街があったのは記憶に新しいが、そこが物語の舞台である

▼失意の青年岡本駿は放浪の果て、水上店舗通りにたどりつき、そこで高齢フリーター川平健と老女傑鶴子オバアと交流、やがて「水上ラーメン店」を開店する。しかし、開店当日にきた男女の客が水死体で発見される

▼この水難事件の謎を追うことになった駿と健は、ガーブ川工事の時代に暗躍した在日米軍とCIA、そして沖縄戦後史の闇と向き合うことになる。時は朝鮮戦争と冷戦、そしてベトナム戦争の時代。ガーブ川工事と水上店舗建設に米軍は資金を提供、その一角に秘密諜報(ちょうほう)拠点を置く。そして、そことつながる工事と施設、交錯する人たちによって、事件が展開される

▼歴史を彷彿(ほうふつ)させるストーリー。その自由な発想と雄大な構想、表現の的確さと美しさが光る

▼作者の上里叶子は京都大学法学部に在籍する26歳。城辺出身で琉球大学名誉教授上里賢一の娘で、上里樹氏と立津和代氏のめいである。郷土関係者の活躍はとかくうれしいものである。何よりも、将来を嘱望される作者の大成を期待したい。(空)

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