行雲流水
2019年9月7日(土)8:54
【行雲流水】(地域包括支援センター③)
生まれ育った土地を故郷という。異郷で暮らすようになって事あるごとに懐かしさが湧くのが故郷だが、年を経るにつれて懐かしさもうすれ異郷での暮らしに馴染んでいくのが現代に生きるおおかたの人々の姿ではないのか
▼生まれ育った土地は追憶の彼方にあって暮らしの最中にある土地が住み慣れた場として年老いて離れがたいものとなる。勿論、先祖伝来の家屋敷を引き継いでその土地を離れることなく歳を重ねた人たちにとってはかけがえのない場所であることは言うまでもない
▼住み慣れた場所、かけがえのない場所であるが故に高齢者と言われるようになってなおさらその土地・地域に深い愛着を持つのは当たり前のことであろう。しかし、愛着する土地とはいえ高齢者をとりまく環境は住みやすいものとは言い難いのが現状だ
▼汗して育てた子供たちは仕事や諸般の事情で親元を離れて家族としてのつながりは希薄になり、高齢となった親自身の気力・体力の衰えは地域社会との関わりを拒む原因となって孤立した状態に陥りやすくなる。そのような高齢者を標的にした犯罪も後を絶たない
▼気づいてみれば身体機能は衰え認知症に見舞われ頼れる家族もなく孤立しているところを犯罪者に狙われる構図が浮かび上がる。これが世紀を生きる高齢者なのだろうか
▼高齢者が地域で安心して暮らしていくのになにが必要だろうか。法律に定める制度としての老人福祉サービスは多くの課題を抱えたままだ。行政は制度の維持だけでもかなりの負担を感じていることだろう。行政サービスを補う地域の福祉社会づくりが求められているゆえんである。(凡)