行雲流水
2019年9月26日(木)8:54
【行雲流水】(ブーメラン効果)
下地市長が提訴議案を撤回した。順当であろう。政治の場、行政の場、司法の場が不分明のまま感情的な争いになっていただけに、多くの市民がホッとしたのでは。〝白黒闘争〟は昔の遺物だ
▼「惻隠(そくいん)の情」という言葉がある。人が困っていることをかわいそうに思う心のことだ。先人たちは、「思いやり」の循環型社会を理想とした。「いじめ」社会とは正反対だ。先達は「悪貨は良貨を駆逐する」とも言った。現代は、「思いやり」より「いじめ」が優勢になりがちのようだ
▼心理学の世界では、「ブーメラン効果」という言葉がある。逆効果となって戻ってくることをさす言葉だ。「空振り」どころか「しっぺ返し」を食らう場面で使われる。恋愛や営業活動で強引な売り込みをすると、相手は期待とは逆の反応を示したがるという
▼政治家の演説でよく耳にする〝説法〟がある。「これでよいのでしょうか、皆さん!」と問いかけると、聴衆は「よくない!」と応じる。説得というより扇動のにおいがする。「ブーメラン効果」の逆説的応用であろうか
▼シェークスピアは、「ジュリアス・シーザー」で〝アントニーの扇動術〟を描いた。ヒトラーは、巧みな演説で多数派を形成し、民主的な手続きを踏んで権力を掌握した。昨今は、民主主義を標榜する国が混迷を深めている。英国の分裂、米国の直情径行、韓国の独善などだ
▼先人たちの智恵である「デモクラシー」は、今や変質してしまったようだ。先人たちの目指した姿とは〝似て非なる〟姿になっているように見える。(柳)