福祉
食品と共に優しさ届ける/フードバンク「んまんま」
「フードバンク」と「フードドライブ」、聞き慣れないこの二つの言葉が昨年の10月ごろから一気に島内に浸透してきた。この二つの言葉は、生活困窮世帯に食品を届けながら支援し、自立に向けた後押しをするために多くの人の善意と優しさが土台となった取り組みで、これからの地域福祉にとって大切なキーワードとなりそうだ。
「フードドライブ」は、家庭で余った食べ物を学校や職場などに持ち寄り、それをまとめて地域の福祉団体や施設、フードバンク等に寄付する活動。
「フードバンク」は、寄贈された食品等を、福祉施設や生活困窮者の支援団体や世帯などに届ける活動。
宮古島市におけるフードバンクは、市社会福祉協議会の「んまんま」が2019年10月に発足し、寄贈された食品を困窮世帯に届ける活動を地道に進めてきた。
その中心となったのが担当の松下智美さんだ。5年前に宮古に移住した松下さんは愛知県出身。現在は同協議会の地域福祉コーディネーターとしても活躍している。
社協で勤務する中で松下さんは、島内の貧困問題が深刻であることを知り、フードバンク立ち上げに動き出したという。
「ソーシャルワーカーと話をしている中で、島内にもあす食べるものがない人たちが実際にいるのに私たちは何もできないでいた。それをどうにかしたかった」と、フードバンク発足に至った経緯を説明した。
そうした中、昨年10月にに同協議会、市、日本郵便沖縄支社が「フードドライブ」の協定を結んだことで、島内の郵便局に食品寄贈用のフードボックスが設置され、「んまんま」に届けられる食品の量が増えた。
この記事が新聞で報道されてから新しい動きも生まれ、伊良部島小学校・中学校では独自の「フードドライブ」を実施。当初予定よりも多くの食品が寄せられたことで贈呈式は2回に分けて行われた。
こうした動きについて、松下さんは「本当にありがたいこと。まだまだ知名度は低いが、今は島の実情を知ってもらうことが大切で助け合いの場に多くの人が参加してくれればうれしい」と話した。
一方で、こうした取り組みについては「結局、対症療法的なもの」と指摘。その上で「ある意味で貧困は世代間の連鎖。その連鎖を切れるような活動を今後やっていきたい」と意欲を示した。
最後に松下さんは「不安を感じながら生きている人が一人でも減るために頑張りたい。島全体の幸せの底上げができたら良いと思う」と笑顔になった。