行雲流水
2011年5月23日(月)22:51
詩的感動の喜び(行雲流水)
詩的感動の喜びは、「発見の喜び」だと言われる。詩は、日常生活では気づかないことを気づかせ、ものの見方や感じ方、考えることを新しくさせ、世界や人生をより深くとらえさせることに役立つ
▼しかし、現代の詩の多くは難解で、敬遠されがちである。このような状況で、詞華集『ポケット詩集』(童話屋)が発行されてベストセラーになり、本来、誰にでもある詩心を改めて触発している。編者の田中和雄氏は呼びかける。「詩を読みなさい。とびっきりいい詩を読みなさい。いい詩というものは、詩人が自分の思いをどこまでも深く掘りさげて普遍にまで届いた詩のことである」
▼選び抜かれた33編の詩は、目新しいものというより、最もよく取り上げられるものであるが、読み返すごとに真実に降りていく類のものといえる
▼哲学者の谷川徹三に、最も精神性の高い詩だと評される宮沢賢治の「雨にも負けず」がある。吉野弘の「Iwasborn」がある。英語では受動態で、生み出されるという宿命でありながら、それは、自ら生を受けようとする意志の心象でもあると、作者は語っている。武満徹の曲で歌われる、谷川俊太郎の「死んだ男の残したものは」は優れた反戦詩である
▼きらりと光る言葉に出合うのも楽しい。「ひとつを失うことなしに、別個の風景に入っていけない」(真壁仁『峠』)。「正しいことを言うときは、相手を傷つけやすい」(吉野弘『祝婚歌』)
▼ともあれ、「詩は万人のためのものである」(エリュアール)。