行雲流水
2011年6月27日(月)23:16
音楽の力(行雲流水)
人は文化を持っている。それ故に、多彩な生きる内容を持ち、人と人とが結び合う
▼NHKの、旅のチカラ「未来を奏でるオーケストラ~舘野泉フィリピン・セブ島」を見た。舘野はフィンランドを拠点に活動する世界的なピアニストであるが、長年にわたりセブ島で貧しい子どもたちを支援、オーケストラを結成した。ところが、2002年に脳内出血で右半身不随になる。その後、懸命なリハビリを経て「左手のピアニスト」として復活した。彼は12年ぶりにセブ島を訪ね、かつての教え子たちと共演を果たした。感動的な美しいハーモニーが島に響いた
▼新井満は石川啄木の詩に、多感な詩人をほうふつさせるような曲をつける。彼はその曲「ふるさとの山に向かいて」を、渋民村で、小学校の子どもたちと声を合わせて歌った。彼は言う。「帰りたくても帰れなかった啄木を、歌に乗せて故郷に帰してあげたかった」
▼世界のどこでも祭りがあり、そこには音楽がある。戦後の沖縄では、そのアイデンティティー(自己同一性)を、音楽や舞踊等の文化が根底で支えた
▼優れた音楽は人の心の深みに達する故に、各界の独創的な人々の世界と内面でつながる。ナチスに虐げられるユダヤ人の人々を救済するコンサートに、量子論の父とも言われるプランクはピアノを弾き、相対論のアインシュタインはバイオリンを弾いた
▼カザルスは国連での演奏の最後には「鳥の歌」を弾いた。そして言った。「私の祖国では鳥たちはピース、peaceと鳴いている」