行雲流水
2011年10月3日(月)23:25
寓話詩(行雲流水)
『千年紀のベスト100を選ぶ』(丸谷才一他選、講談社)には『源氏物語』や『失われた時を求めて』、『ガリヴァー旅行記』などが入っているが、『寓話詩選』(ラ・フォンテーヌ)も選ばれている
▼この中の寓話詩はイソップ物語を下敷きに書かれた物語詩で「カラスと狐」、「北風と太陽」、「アリとキリギリス」など、動物などを擬人化して、教訓や風刺を込めて物語を展開する
▼たとえば「カラスと狐」。「なんと美しいカラスだろう、歌声も聞きたいなー」。気をよくしたカラスが一声カーと鳴いた拍子にチーズが落下、キツネがそれをいただいて逃げる。「お世辞には気をつけろ」ということか。そういえば論語には「巧言令色鮮仁」という言葉があるし、近年「ほめ殺し」という言葉もはやった
▼「北風と太陽」では、北風が力いっぱい吹いて旅人の上着を吹き飛ばそうとするが、かえって上着をしっかり押さえられてしまう。次に太陽が照らすと、旅人は自ら上着を脱いだ。北風は強制や抑圧、冷たさの、太陽は理解や共感、暖かさのたとえであろう
▼フランス人は子どものときからラ・フォンテーヌの「寓話」を暗唱させられ、人生の厳しい真理を叩き込まれるという
▼イソップは紀元前の人、ラ・フォンテーヌは17世紀の詩人。長い間、人々に愛されてきた寓話には真実がある。物語として楽しむことも、教訓を引き出すこともできる。「アリとキリギリス」のアリのように真面目に働きたいが、「仕事のない者は怠け者か」と社会に問うこともできる。