手績みの技を後世に/宮古苧麻績み保存会
結成10年、研修生の作品展示
宮古上布の原材料である苧麻糸(ブー)は、手績み技術者の熟練した手業から生まれる。ところが、最近では技術者の高齢化で上質な手績み糸が減少し、国指定重要無形文化財の宮古上布の保存伝承に支障をきたしている。こうした状況に危機感を抱く関係者は、技術者の養成などを目指して2001年、平良・下地・友利に各地区で文化庁国庫補助事業により、手績みの伝承事業を実施した。
2002年、3団体が宮古島苧麻糸連絡協議会を結成。さらに宮古諸島内での伝承事業を広げ充実させようと行政とタイアップして03年に「宮古苧麻績み保存会」と名称を改め「国選定保存技術」に認められた。現在16の教室で130人余の研修生が技術指導を受けている。
同会は3、4の両日、市下地公民館で第4回苧麻績み展示会を開催、研修生122人の苧麻糸成果品と16人の講師の参考作品などを展示して、手績み技術のすばらしさや可能性を紹介した。結成以来、各教室では苧麻栽培を始め、5工程を学ぶもので、糸の展示のほかに糸績みや撚りかけ、整教などの実演も行われ、熟練の手技を披露していた。昔ながらの地機織器も展示され、時折実演もなされた。
若いころから宮古上布と関わってきた下地出身の長間ハツさん(89)は、ヤマ(糸車)で経糸と緯糸を紡いでいた。右手で糸車の取っ手を回しながら経糸2本に緯糸1本をねじりながら1本にしていく。途中で切れると素早くつなぎヤマを回す。その手慣れた技は、長年の経験が生んだ熟練のもの。会場を訪れた人たちは、ただ感心しながら見入っていた。
長間さんのひ孫にあたる奥平尚史くん(下地小5年)は、幼いころから祖母の手仕事を見ていて、手伝うようになった。会場の隅に置かれたチョマの繊維採りを手ぎわよく行っていた。幹をポキと折り、表皮をスーッと剥いでいく。器用なその作業を「楽しい?」と尋ねると大きくうなずき、これからも祖母の仕事を手伝って行きたい思いを伝えていた。
苧麻糸手績み技術者養成事業・伝承者養成講座
〈教室〉▽平良地区(西原・東仲宗根・富名腰・腰原・鏡原)▽下地地区(川満・上地・与那覇・洲鎌・皆愛・棚原)▽城辺地区(友利・砂川)▽上野地区(新里・宮国)▽伊良部地区1教室、▽多良間地区1教室。
〈研修内容〉3~5年間での終了を目指し、栽培、繊維採り、糸績み、撚りかけ、整経の5工程を習得。成果品の展示発表会に出品。
〈募集〉2012年度は15人の予定。
〈問い合わせ〉宮古苧麻績み保存会事務局(0980-77-4947)担当・岩本。