行雲流水
2012年4月17日(火)9:00
「童謡」
童謡が静かなブームを呼んでいる。童謡は大人にとっては心のふるさとだし、子どもにとっては美しいメロディーに乗せて自分自身の心や他者、自然と共感できる
▼ところで、いらみなぜんこアナウンサーの著書にショッキングな話がある。テレビのCMに代表される明るく活発でリズミカルで騒々しいメロディーは長調で、その音に慣れすぎてしまった子は、哀調を帯びた短調の子守唄を聞かせると拒否反応を起こすことがあるという
▼いらみなさんは童謡作家たちのふるさとを訪ねて取材を進め、それを著書『童謡のふるさとを歩く』にまとめている
▼それによると、童謡作家たちに共通しているのは、純朴な心を持っていて、子どもたちのために信念を貫いた。「えんどうの花」の金城栄治はお風呂を沸かして子どもたちを待った。宮良長包は、民俗文化が弾圧されている時代に、琉球民謡の素晴らしさを発見、その旋律を生かした作品をつくり生徒たちに歌わせた。野口雨情は立ち小便で自然と親しんだ
▼童謡にはいろいろなメッセージが込められている。「シャボン玉」は幼くして消えた娘への鎮魂歌であり、「青い眼の人形」は日米親善の友好使節としてアメリカから贈られた。「里の秋」は元気に復員してくる父を母親と待つ歌であり、「星の界」は天文学者をして「天文学の歌」だと言わしめている
▼テレビのばか騒ぎもコマーシャルのうそも、自然破壊も政治の体たらくも悪質の「長調」であり、子どもたちの情緒や思いやりの心の育成を阻害している。