企画・連載行雲流水
2012年7月24日(火)9:00
「1/fゆらぎ」
「暑いですね」というあいさつがあちこちで聞かれる。確かに今年の各地の気温は記録的に高いし、体感的にも特別に暑い。そんなときには、少しでも過ごしやすくなるために、自然に涼を求めることになる
▼そよ風、小川のせせらぎ、波の音、木漏れ日、ホタルの光などは、人に快感を与え、しばし暑さを忘れさせる。ところで、これらの現象は共通した特徴を持っている。「1/fゆらぎ」(エフ分のいちゆらぎ)と言われる特性である
▼人の心臓の鼓動も機械のように完全な一定ではなく、いくらかのゆらぎをもっている。そのゆらぎの大きさは、f(周波数、振動数)分の1である。例えば、1分間70回の鼓動は1/70回のゆらぎを持つ
▼心臓の鼓動など、人の体のリズムが1/fゆらぎになっているために、1/fゆらぎをもつそよ風や波の音などが人に快感を与えると考えられている
▼音楽の音の高低や強弱にもゆらぎがあり、美空ひばりの歌や、モーツァルトの曲にも1/fゆらぎの要素が多くあって人に快感を与えるという。街中のビルには直線や直角など幾何学的なものがあふれていて、ゆらぎがない。それは効率的ではあるが、どこか冷たい。その点、同一規格で大量生産されたものに比べて、手作りの物には温かみがある
▼人の生理ともろもろの現象の存在様式が根源的に関わっていることに感動する。暑さを忘れさせたり、涼を呼ぶものの中に、囲碁を楽しんだり、「1/fゆらぎ」へ思いをはせることを加えることが人間の文化である。