行雲流水
2012年8月27日(月)22:20
「宮沢賢治」(行雲流水)
宮沢賢治・作詞作曲の歌は幻想的なイメージに満ちている。例えば、アンドロメダは私たちの属する銀河とは別の銀河で、遠くでぼーっと見えるだけだが「つゆとしもをおとすアンドロメダ」と表現されている。曲は親しみやすく魅力的で、「銀河鉄道の夜」の主旋律や北十字やサザンクロス(南十字)、ジョバンニやカムパネルラなどがイメージされている
▼こんな自然描写がある。「私たちはきれいに透き通った風をたべ、桃いろの美しい朝の日光をのむことができる」。自然や宇宙についての特異な感覚を持つ賢治は私たちをついに「銀河鉄道の夜」の世界に誘う
▼ジョバンニは天国でもどこへでも行ける切符を持っていたが天国へではなく母親のいる現実へと走る。「天国よりももっといいところをこさえなけぁいけないって、僕の先生が言ったよ」。だがそのとき、本当の幸せを求めていこうと誓いあっていたカムバネルラは人を助けようとして溺れて死んでしまっていた
▼震災で土地や家を失い、家族や友人を亡くして途方にくれて、それでも生きていかなければならない人々に賢治はいつも寄り添っている
▼敬虔(けいけん)な宗教家である賢治は、次のようにも言っている。「みんながめいめい自分の神様が本当の神様だというだろう。けれどもおたがい他の神様を信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう」
▼世界は弱肉強食の世界に突き進んで行くようにみえるが、賢治は次のような言葉を残している。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」。