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行雲流水
2012年12月17日(月)23:06

「第9交響曲」(行雲流水)

 年の瀬も迫り、各地でベートーベン作曲の交響曲第9番(合唱つき)が演奏されている。この曲の第4楽章の主題は「喜びの歌」としても親しまれている。原詞はシラーの、喜びと平和と人類愛をうたった詩『歓喜に寄す』によるものである


▼この交響曲の主題は「苦悩を突き抜けて歓喜に至る」である。第1楽章の葛藤や奮闘、第2楽章の熱狂や奔放、第3楽章の甘美や瞑想を感じさせる旋律を、第4楽章では否定して、主旋律が神々しく提出される。続いてバリトン歌手が立ちあがり高らかに歌う

▼「おお、友よ、このような調べではなく、もっと快い、喜びに満ちた歌を歌おうではないか」。この冒頭の部分はベートーベン自身の作詩によるものである。それは、苦悩や絶望の中から希望の再生を果たした彼自身の喜びの表現であると同時に、普遍的な連帯の呼びかけでもある

▼コーラスは歌う。「なんじの神秘な力は、切り離されたものを再び結びつけ、なんじの優しい翼のとどまるところ、人々はみな兄弟となる」。戦争で切り離された東西ドイツが、再統一されたとき祝典曲としてこの曲が演奏された。長野オリンピックの開会式では、世界五大陸を結んで演奏され、その映像が世界中に中継された

▼「大きな恵みを受けたものは、友の中の友となり、優しい妻を得たものは歓喜の声に和せよ」。愛の賛歌であり、生きることの賛歌である

▼世界の多くの人々が年末にこの「第9交響曲」に感動、迎える新年に希望を託す。「第9」よ、響け、とどろけ。

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