エコアイランド宮古島の取り組みについて(2)/大金 修一
私見公論59
宮古が国から低炭素化に向けたモデル都市である「環境モデル都市」の認定を受けていることは前回の私見公論で紹介させていただいたが、宮古ではその認定を受けて「環境モデル都市行動計画」を策定しており、その中では認定時の基準年となる2003年の温室効果ガス排出量の約32万トンを2030年に約30%、2050年には約70%削減しようという目標を掲げている。
国が掲げる温室効果ガス削減計画の場合、その取り組みを促すための補助金や規制の他、森林吸収や排出権購入等によりその目標を達成しようとするが、宮古の産業構造と現状15%程度の森林率を考えると、非常に野心的な目標と言えるのではないかと思う。この目標達成に向けて課された課題は重く、どのような単一の施策もかかる大きな目標を達成することは不可能であることから、産業活動、市民生活のあらゆる側面での取り組みにより初めて成し遂げられるものである。
宮古ではさまざまなエコ活動が展開されている。生活の源である地下水の保全をはじめ、海洋保全や森林保全、ゴミの3R活動、再生可能エネルギーの活用やエコイベントの開催等々その活動やプレーヤーは多岐にわたり、島の人々のエコに関する意識は非常に高い。また、水のノーベル賞の受賞やエコデンカーレース大会での上位入賞、エコ講座の開催等、教育現場においても熱心に取り組まれている。
宮古のエコアイランドに向けた取り組みは、個別事業や市民レベルでの活動を通じて徐々に島全体に浸透しつつあるものの、この高い意識を島の中での内部活動に止めてしまうことは非常にもったいないと感じる。むしろ対外的に積極的な情報発信を行い、その行動にさらなる付加価値を生み出していくことが重要である。
宮古の抱える基本的課題について、大きく三つあると考えている。まず一つ目は「資源の島外依存」である。これは資源の乏しい島嶼国であるわが国の宿命であるが、その中でもさらに離島である宮古においては、生活に不可欠な食料やエネルギーの島外への依存度は高い。食料については、沖縄県の食糧自給率は平成22年度におけるカロリーベースの概算値で34%である。これは全国平均の40%に比べると若干下回る程度ではあるが、中身はほぼサトウキビであり、サトウキビを除いた食料自給率は平成17年時点で6%であるとされている。また、エネルギーについては、電力は沖縄本島と系統がつながっておらず完全な独立系統であり、発電用燃料は海上輸送により島外から運ばれている。このような外部依存度を低減化させるためには、地域資源を活用した地産地消による資源循環型社会の構築が必要となる。
二つ目は「環境負荷の顕在化」である。これは「エコアイランド宣言」にもあるように、ライフスタイルの変化や社会インフラの整備による産業経済活動の活発化等により生活の豊かさが増す一方、地下水汚染や海洋汚染等が現れはじめていることから、その保全活動が必要となる。
三つ目は「人口減少」である。過去にはピークで7万2千人超あった人口は現在では5万5千人を割っており、先の国勢調査においても宮古は県内11市の中で唯一の人口が減少している市となっている。今後、人口減少はさらに続くと見込まれており、地域産業の振興による雇用の確保等が必要である。
これらの基本的課題を踏まえた上で、この課題解決に資するアクションの一つとしてエコアイランド宮古島の取り組みを進めて行くことが重要である。より一層の加速を図りつつ、かつ持続的なものとするためには、「エコアイランド宮古島」のブランディング化を図り、その共通認識の下、個々の環境対策のみならず、地域活性化や地域産業の振興に波及効果のある施策として戦略的に推進する必要がある。