行雲流水
2013年4月10日(水)22:38
「農業保護の手法」(行雲流水)
フランスは、食糧自給率130%。小麦、ワイン、チーズなどの輸出が盛んな農業大国だ。土地も肥沃だが、振興策や保護策も充実している
▼フランスの農業保護策の一つに、内外価格の差額分を直接農家へ補助する制度がある。安い消費者価格を維持しつつ農家所得を保障するやり方だ。その予算は、一般財源(所得税や消費税など)でまかなう。消費税率が高いのは保険や年金のためばかりではないようだ
▼一方、日本の農業保護策の主な柱は関税だ。安い輸入品に高い関税をかけて消費者価格を底上げし、国内農産物の価格を支えるやり方だ。古くから多くの国が実施してきた手法だが、今や国際世論は関税撤廃へと向かっている。日本は苦しい立場に
▼しかも、砂糖の場合は高い関税率(328%)だけでは不十分だ。粗糖を輸入して精製する業者に調整金(約500億円)を課し、それを財源として農家所得を保障している。甘味資源の保護策は、高率関税と調整金の2本立てだ
▼もし関税と調整金を廃止してフランス式保護政策に切り替えたらどうなるか。砂糖の消費者価格は3分の1に下がるが、甘味資源農家の所得保障のためには一般財源約2000億円が必要だ(てんさい糖と甘しゃ糖の生産量は7:3、内外価格差は3倍:6倍で試算)
▼農産品に関するTPP交渉の難敵は外国か、財務省か、消費者か。三つどもえの「知恵の輪」を解く作業がこれから始まる。4月5日、TPP政府対策本部が発足した。国内外の調整に臨む機関だ。お手並みを注視したい。