宮古島マンゴーのブランド化を目指して(3)/上地 克冶
私見公論65
前回は、販売活動の中で悔しい思いをご紹介しましたので、今回はうれしいエピソードをご紹介いたします。
場所は同じく新宿の試食販売会場です。50代前半のご婦人が平日の夕方、秀のばら売りのマンゴーたしか400㌘ぐらいだったと思いますが、2個お買い上げになられてお帰りになりました。翌日同じ頃お見えになり覚えていますかとたずねられました。ちょうど私が対応したお客様でしたので、よく覚えていますと申し上げながら、2日も続けてお見えになるということは、昨日お買い上げいただいたマンゴーに不良品があり、クレームじゃないかと嫌な予感が致しました。
するとお客様が、実はと話しかけられ昨日2個マンゴーを買い帰宅し夕食を作り、ご主人の帰りをマンゴーを冷やして待っていましたが、仕事が長引いて帰りが遅くなる旨の連絡があったそうです。奥様はしょうがないので、マンゴーでも食べながら帰りを待とうと思い、マンゴーを切り食べ始めたそうです。
ところが初めて召し上がって、あまりのおいしさにご主人の分まで食べてしまい、お帰りになる頃は種しか残ってなかったそうです。それで申し訳ないので、ご主人にはマンゴーを食べたことは内緒にして、今日また買いに来ましたとのことでした。その話を聞いてあまりのうれしさにまた、2個お買い上げいただいたので、1個はオマケに3個持って帰っていただきました。なんと微笑ましい話でしょうか。
ところで皆さんはブランド化というとどのように理解されていますでしょうか。ブランドとは沖縄農業研究会(菊池先生他数人)の報告書によれば、「製品・サービスを特徴付けるために付与される名前やマークなどの総称である」。つまりブランド化とは一定の品質、一定の量のものを消費者に提供し続けることで初めてなし得るものだと思います。
しかしこのブランド化戦略を根底から覆すような出来事がよりによって宮古島の一部の方によって、20008年に産地偽装という形で起きました。ブランド商品はある面では希少価値を最大の武器にする側面もあります。足りないからといって他産地ましてや外国産で補うなんてなんと嘆かわしいことでしょうか。
このような観点に立ってブランド化の戦略として、私共マンゴー出荷組合は、まずブランドにする名前から決めようとウェブサイトで全国から公募し、北海道から応募された方の「紅宮美」に決まりました。次は品質の基準です。秀品に関しては糖度13度以上で赤みが7割以上、優品に関しては糖度12度以上赤みが3割以上7割未満と定めこの規格に沿って出荷しています。特に最高級品の「紅宮美」に関しては、糖度15度以上赤み8割以上の他に重さも400㌘以上と定め、宮崎の太陽のタマゴ以上の厳しいクオリティーにしてあります。
これまでは、非破壊の糖度計が高価で切断しないと糖度が測定できなく、秀品の選別も目測によるもので、色付きさえよければ秀品でした。ですから甘さにばらつきが多少あったと思います。
私どもは本土のベンチャーの会社と提携し、非破壊の糖度計をリースしていただき、品質の保持に努めています。量の確保については毎年コンスタントに一定量以上の収量を生産しなければなりません。そのためにはまず、隔年結果を起こさず、異常気象でも確実に開花させなければいけません。私共は昨年の開花不良の反省の上に立ち、まず宮古や沖縄本島で毎年開花の実績のある生産者を訪ね指導を仰ぎました。
今年は宮古島の平均開花率が57%のなか70%の開花を見ることができました。昨年までの実績からご紹介しますと、反収で宮崎県の平均が1反2㌧、沖縄本島が1㌧一番条件のよいはずの宮古島はなんと0・8㌧です。この数字だけでも平均値以下の宮古島のマンゴー生産農家は反省しなければいけないと思います。数字の悪い大きな原因は隔年結果ではないでしょうか。ブランド化の要因の一つである一定量の安定供給に黄色信号と言われても仕方ありません。