行雲流水
2013年4月24日(水)22:04
「ユーモア」(行雲流水)
ユーモアは、人の心をなごませ、対話を円滑にする。英国議会では、演説の一節にユーモアを入れる伝統があるという。皮肉屋チャーチルの名句の数々は、こうした土壌で培われたのかもしれない
▼駐英大使を勤めたこともある吉田茂は「俺はひとを食って生きてきたから、食べ物はいらない」と言った。日本人のユーモアの原点は〝しゃれ〟にあるようだ。「泰平の眠りをさます上喜撰たった四杯で夜も眠れず」。ご存じ黒船騒動だ。しゃれはことば遊びにすぎないが、おかしみを誘う
▼那覇市内の小さな居酒屋でのこと。〝一見さん〟らしき客と隣り合わせた。ケラマから来たという。精肉屋を営む傍ら、たまには観光ガイドもしているとのこと
▼このガイドさん「ケラマには無人島が多く、そこの村長もしている」と言い出した。ケラマではシカにも投票権があるのか?不審に思って尋ねると「なにしろケラマでは自然との共生が実践されているから」。カエルが雨に打たれているような返事が跳ね返ってきた
▼「ケラマにはシカしかいないと思ったら、大間違い。浜には貝もいる」。どんな貝かと問えば「ほら貝にサザエさん。婦人会もある」。駄じゃれの掛け合いで座は盛り上がり、ついでにメーターも上がった
▼「そろそろ帰る」と言うガイドさんに、一度ケラマに行ってみたいがどんな方法がいいか相談すると「ぜひ、クジラに乗って来てほしい」。久々に聞く〝ひとを食った話〟に、遠来の友と久闊を叙している気分になり、とうとう、ガイドさんの名前は聞きそびれてしまった。