「年末は、一年の総決算期であり、次年度への正しい橋渡しでもある」
日本親業協会親業インストラクター 福里 盛雄
1 年末は一年の総決算期である。
年末は、自分が生きてきた一年間の営みの総括であり、次年度への橋渡しでもある。一年の総括が正しくされないと、次年度への橋渡しも正しくされない。新年に実現の望みを賭けた計画がどれだけ達成されたでしょうか。計画は多くしたのに、実現したのはごくわずか、自分の力不足と努力の足りなさに一抹の寂しさを感ずるのも、年末の特別な感情なのかも知れない。
私たちは、山を登りながら、登ってきた後を振り返ると、自分が登ってきた後がはっきりと見えるものです。それと同じように、年末になって、一年を振り返ってみると、様々なことが起きたことが分かります。
天災としては、地震や洪水、雪崩による交通事故、竜巻による家屋の崩壊、人体への被害、原因不明による海の多量の生き物の死滅等、この地球はどうなっているのか、と自然の営みに対する恐怖と人間の余りの無力さを感じさせられた年でした。人間の科学文明の発達により、地球は狭くなりました。遠い場所に起きた出来事も隣近所の出来事のように感じられるようになりました。ですから、情報社会では、人は精神的に忙し過ぎて、一つの物事にゆっくりと深く関わっている精神的ゆとりを持つことは許されない。そのために、現代社会は表面的浅薄な人間像の人を多く排出する結果となる。何事も消化不良に陥り、精神的ストレスによって心が不安定になり、知識人の間にさえ心身障害者が多くなる傾向を示した年でもあった。
今年は天災とともに、人災も多い年でした。特に、今年は、命を粗末にする様々の悲しい出来事が多かった。子供の虐待やいじめによる自殺、そして、いじめをめぐる問題の処理のまずさのために学校の校長先生が、責任を感じて自殺する例も起きました。一つの不幸が新たな次の不幸を引き起こす誘因となった。
そのために、子の虐待、いじめ、自殺の人災に対しては、私たちは、一生懸命に諸々の施策を試みました。しかし、私たちはその解決に関して、これという満足する対策を、まだ見つけ出すことはできない状態のど真ん中で迷い続けている。
2 新しい年への橋渡し
天災については、人間の文明の利器を駆使し、正しい情報を速やかに収集し、被害を最小限に止めることもできる。しかし、地球温暖化による災害の防止策をめぐるその解決策を実行に移す場合にも各国の利害の対立により挫折している。これは人間の自己中心性に起因している。世界の人々が、自分たちの利益のみを考えないで地球規模での発想の大転換をする必要がある。これこそ次年度への橋渡しである。
人災についても、すべての人間が、人として心を豊かにし、正しい人間関係を創り出すように努力しなければならない。人災による人の不幸は、心の飢え渇きが要因である。何故なら、自分の心が幸せに満ちている人は、他人に対してその人を不幸にするようなことはしません。二十世紀頃から、心理学の権威者の多くが、人の心の飢え渇きについて警告してきました。心の飢え渇きによって人は、孤独になり、精神的に不安になり、心のコントロールを失い、正しく行動をすることができなくなり、物事の善悪の境目を見分けることができなくなる。今日の社会でなされている悪い行為は、そこに原因があると考える。人災の不幸をなくすためには、心の飢え渇きを満たすことが次年度への橋渡しだ。